伊藤 博文(いとう ひろふみ)著  日本評論社(1997年5月) \2,900円+税
ISBN4-535-51086-5

『対話の窓』原稿より




 “コンピュータを使いたい”、その動機はさまざまです。最近周りの人が使いだしたからとか、時代の波に乗り遅れそうだから・・・。こうした動機からコンピュータを始められる方もおられるでしょう。もうすでにコンピュータを持っているけど埃をかぶらせておられる方、すでに利用しているがワープロ程度にしか使っていない方、こういう方々のために本書『法律学のためのコンピュータ』を作りました。内容は法学生向けに書いてありますが、コンピュータをこれから利用したいと考えておられる方には役立つ内容が盛りだくさんです。これまでのコンピュータ解説書のようにソフトウェアの使用方法の紹介に終始しているのではありません。法律を学ぶ人にとってのコンピュータ活用方法を見ることで、あなたのコンピュータの潜在的可能性が引き出されるはずです。是非ご一読ください。そして電脳世界に来てください。いっしょに学んで遊びましょう。
表からみたところ
裏からみたところ



本書 より


 この本は、コンピュータ法学(CaLS)の教材として利用するために書かれたものであり、「コンピュータ法学(CaLS)用教材Ver.3.0」という別名を持つ。コンピュータ法学(CaLS:Computer aided Legal Studies)とは、私が個人的に提唱している法律学の研究手法であり、従来の法律学研究・教育にコンピュータを手段として導入し、効率的な法律学研究を進めようとするものである。CaLSという命名の由来は、アメリカの若手法律学研究者を中心に台頭した法学研究の新しい潮流である批判法学(CLS:Critical Legal Studies)を念頭に置いており、既存の法律学に対する批判的な観点から、コンピュータ・テクノロジーを駆使して法律学の再構成を図ろうとするものである。

 コンピュータ法学というものの基本構想は、私が大学院の修士課程で研究を始めてまもない1986年に持っていた。当時、この構想を「法とコンピュータ−−コンピュータ法学の可能性」という未刊の論文にまとめたことがある。しかし、これには多くの理解者を得ることができず、研究は中途半端な形でしばらく放置されてきた。その後この考えを精緻化し1993年「コンピュータ法学(CaLS)の可能性」と題する論文として、豊橋短期大学研究紀要10号に掲載し公表した。これがコンピュータ法学(CaLS)研究の第一歩であった。さらにコンピュータ法学(CaLS)の研究は、日本私学振興財団の「特色ある研究」に選ばれ、その研究助成の下、さまざまなハードウェアを揃えるに至り研究環境が整った。この段階においては、本研究へ賛同していただける方々と巡り会え、いくつかの助言をいただき知的触発を受け、研究環境を充実させることができた。この時期には、基礎的な教材としてコンピュータ法学(CaLS)用教材Ver.2.11という冊子を作成し講義用教材として活用していた。これを単行本としてVer.3.0へと書き改めたのがこの本となった。現在、コンピュータ法学(CaLS)研究は、ネットワーク環境下における法律研究および法学教育を行うべく、その基礎的なインフラであるネットワーク環境下での研究手法および法学教材作成に全力を注いでいる。このネットワーク環境下での研究が将来の法学研究・教育のプロトタイプとなると確信している。
 本研究を始めたときは、8ビットパソコンがおもちゃのように動くに過ぎなかった。8ビットから16ビット、そして32ビットへとパソコンが進化するにつれ、研究の対象も、DOS 環境から、マルチメディア、ネットワークへと変遷してきた。予想できない今後の変化を考えるにつけ、不安と期待が入り交じる。今後も研究に精進する所存である。

 本書は4部からなる。第一部は導入編で、コンピュータの導入方法が読みやすく説明される。まず、コンピュータを始めてみようという方へのメッセージである。第二部は演習編で、コンピュータ法学(CaLS)の研究成果を12講に分けて学習できるように構成されている。第三部は理論編で、コンピュータ法学(CaLS)の展開方法についての説明がなされる。この理論編は今後このコンピュータ法学(CaLS)研究に可能性を見いだして研究しようとされる方へのものである。第四部資料編には、さまざまな角度から法学を学ぼうとする人のために役立つ資料を集めた。
 コンピュータを学ぶのには理論よりも実践の方が優先される。どのような高尚な理論でコンピュータに立ち向かおうとも、現実に目の前にあるコンピュータが動かせなければ、全く意味のないことである。これがスタートである。この冊子が「コンピュータ」と「法学」の接点を求める方々の一助になれば幸いである。
 最後に、この本の出版にあたり、さまざまな方々から助言をいただいたことに、この場をかりてお礼を申し上げたい。茨木理恵子さん信国幸彦さんには e-mail のやりとりを通じての編集作業でお世話になった。かげながら私の研究活動を支えてくれた、妻実香子にも感謝したい。こうした助力がなければ、こうしてこの本を世に送り出すことは、できなかっただろう。


 愛機 Gateway2000P5-120 より、『』を送り出す。

         1997年3月 伊藤 博文(BadgerHIRO)



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