1998年1月21日 at 熊本大学法学部

 

豊橋創造大学短期大学部秘書科専任講師

伊藤 博文

 

『コンピュータ法学(CaLS)の挑戦

      ---法学教育におけるコンピュータの意義』

 

1.法律学とコンピュータとの接点

1−1.法律学とコンピュータとのかかわりあい

 ★「対象」としてのコンピュータ ← コンピュータ犯罪、電子商取引、情報公開とプライバシー、著作権など。

★「手段」としてのコンピュータ ← CaLS(コンピュータを法学教育・研究にどのように活用していくかを研究)

1−2.コンピュータ法学(CaLS)とは何か

  コンピュータ法学CaLS:Computer aided Legal Studiesとは、従来の法律学研究・教育にコンピュータを「手段」として導入し、効率的な法律学研究を進めようとするものである。

 CaLSという命名の由来は、アメリカの若手法律学研究者を中心に台頭した法学研究の新しい潮流である批判法学CLS:Critical Legal Studiesを念頭に置いており、既存の法律学に対する批判的な観点から、コンピュータ・テクノロジーを駆使して法律学の再構成を図ろうとするものである。

 

1−3.能力区分による段階付け

 ★段階に応じた対応が必要となる。

★コンピュータ・ユーザーの能力による段階付け

能力段階

利用方法

具体的な活用方法

第一段階

ワープロ、表計算

文書作成

第二段階

情報検索

文献・判例検索(CD-ROM、オンライン)、インターネット

第三段階

エキスパートシステム

法律相談、専門家のための知的支援

第四段階

考えるコンピュータ

法解釈システム、判例法抽出システム

 

2.法学教育とコンピュータによる教育

2−1.コンピュータによる教育とは

 ★コンピュータ教育とコンピュータによる教育

  コンピュータそのものの操作活用方法を教える「コンピュータ教育」とコンピュータを使って効率的に教育を行う「コンピュータによる教育」を考える必要がある。

2−1−1.CAI(Computer Aided Instruction)

 ★コンピュータに依る情報伝達の特殊性

  マルチメディア化(文字、画像、音声、動画)、インターラクティブ、ゲーム性、バーチャル・リアリティ

2−1−2.CAIの前提としてのコンピュータ・リテラシー

 ★効率的にCAIを行うには、コンピュータリテラシーが不可欠。

 ★コンピュータ・リテラシーは時代と共に変化する。

 ★今、コンピュータ教育は、小学校も大学も同じことを行っている。

2−1−3.あなた方の世代---20世紀末の法学生

 ★コンピュータ後天的世代からコンピュータ先天的世代への過渡期

 ★ほっておくと、コンピュータ社会から取り残される世代

2−2.法律学の特徴

 ★文字情報を中心とした学問

 ★判例・文献の収集という情報収集・情報処理

 

3.法律学におけるコンピュータの活用

 3−1.法学生のコンピュータへの接し方

 ★アプリユーザーとしての法学生

 ★外国語学習とコンピュータ

 3−2.コンピュータを使うと何ができるのか

  3−2−1.「思考表現の道具」としてのコンピュータ

   ★脳裏に浮かんだことを瞬時に画面に表現できる道具

   ★飛躍的な情報処理能力の向上

  3−2−2.文書作成、情報伝達・収集の道具

   ★用語の意味を調べる

   ★法律文献を調べる

   ★判例を調べる

 

4.将来的な展望

 4−1.コンピュータの持つ問題点

  ★常識の通じないコンピュータ

  ★ブラックボックス主義

  ★人工知能の問題→コンピュータは考えることができるか?

 4−2.コンピュータ法学(CaLS)の挑戦

  ★着実な研究成果の発表 → 技術的提言

  ★後天的コンピュータ世代達へのメッセージ

  ★電子文字化と法律研究

  ★法学教材開発 ゲーム的な要素

 4−3.近未来の法学部

  ★電子文字化された法情報 → ハードディスク上の六法と判例集

  ★遠隔地授業 → 世界中の大学の好きな講義が自宅で受講できる

  ★マルチメディア化された教科書 → 音声、動画を使った教科書

  ★コンピュータによる法的推論 → 裁判の迅速化、法解釈学への貢献

 

5.今、あなたは何をすべきか

 5−1.コンピュータと仲良く過ごす人生設計を

  ★電子メールが利用できる。

  ★インターネットが使える。

 5−2.今後、何が必要となるか

  ★情報収集から発信へ

 

 

資  料

 

T.もっと詳しく知りたい!!

A.コンピュータ法学(CaLS)について

 →伊藤博文『法律学のためのコンピュータ』日本評論社(1997年)

 →伊藤博文「コンピュータ法学(CaLS)の可能性」豊橋短期大学研究紀要第10号194頁(1993年)

B.電子文字化の意味について

 →伊藤博文「電子文字化と法律研究」豊橋短期大学研究紀要11号121頁(1994年)

C.法律学におけるコンピュータの利用について

 →加賀山茂『法律家のためのコンピュータ利用法』有斐閣(1990年)

D.コンピュータの法学教育への利用について

 →伊藤博文「法学教育にコンピュータを--CaLSからの提案」豊橋短期大学研究紀要第13号19頁(1996年)

 →伊藤博文「イントラネットを利用した法学教材提示システムの構築」豊橋創造大学短期大学部研究紀要第14号(1997年)

 →法学教育研究班『法学教育におけるコンピュータの利用』関西大学法学研究所研究叢書第11冊(1995年)

 →武士俣敦「法学教育とコンピュータ(1)」福岡大学法学論叢第35巻第4号449頁(1991年)、武士俣敦「法学教育とコンピュータ(2・完)」第37巻第1号33頁(1992年)

E.ゲームを使った法学教育

 →松岡久和「法学教育とCAI」龍谷法学第26巻3・4号(1994年)

 

U.情報

F.メーリング・リスト

 バーチャル・セミナーへ参加したい人は、簡単な自己紹介文をvseminar-ml@yo.rim.or.jpへ送って下さい。(現在は行われておりません)

G.伊藤博文のメールアドレス hirofumi@sozo.ac.jp

 

V.読み物

 

H.読売新聞記事データベース/G−Search                  97年11月03日

H-1.◆000004   (19950206OYE04004)

先生も「パソコン講習」必修 全国の公立校 生徒に能力追いつかず  95.02.06  大阪読売夕刊4頁(全721字)

 授業へのパソコン導入が進むなか、公立学校の教員研修に「パソコン講習」が必修として盛り込まれることになった。希望者など一部を対象にすでに取り入れている自治体もあるが、文部省が新年度から、各都道府県と大阪など政令指定都市の教育委員会に費用の半額を補助、積極的に推進することにしたもので、新年度予算に2,900万円を計上した。同省は「パソコンに触れたくないという食わず嫌いの先生たちの意識を変えるきっかけになれば」としている。全国の公立学校へのパソコン導入は、平成二年度からスタートした。今年度までの5年間で、それぞれ一校あたり、小学校3台、中学校22台、高校(普通科)23台を目標に整備が進められている。

 しかし、文部省の調査によると、パソコンが使える教師は昨年三月末現在で全体の約34%、このうち授業で活用できる教師は四割にとどまっている。こうした割合は、毎年数%ずつ伸びているものの、パソコンの機能が日進月歩で向上しているうえ、テレビゲームなどに親しんでいる児童、生徒のほうがパソコンの習得ペースが早く、「教師の能力が追いついていない」(同省教職員課)のが実情。

 このため、文部省は、パソコン講習を教職員研修の必修カリキュラムの中に盛り込むことにし、新年度予算で初めて二千九百万円を組んだ。これまでパソコン研修は各都道府県や政令指定都市の教育委員会の裁量に任されていたため、希望者や、授業でパソコンを使うことが多い教材の教師などに受講を限るケースが多かったという。

 同省教職員課によると、先生になって約十年と約二十年になる教員を対象に、研修期間のうち三日前後行う。実習指導には、パソコンメーカーのシステムエンジニアにも務めてもらうことにしている。

                                                                  読売新聞社

H-2.◆000013   (19951227TYE14004)

「パソコンできる」先生37% 88年の3倍に増加/全国公立校調査 95.12.27  東京読売夕刊14頁 社会面(全425字)

 文部省が全国の公立学校の先生937,500人を対象に今年三月末現在で行った調査で、パソコンを操作できる人は37.5%という数字が出た。

 「操作できる」は、ワープロ機能だけでなく、表計算などパソコンのひと通りの機能が使いこなせるのが条件。調査が始まった1988年の三倍になり、前年から3.2ポイント増えた。同省の目標は、2000年までに、すべての先生に「操作できる」ようになってもらうこと。パソコンの方は99年までに、中学、高校では一人一台、小学校では二人に一台の割り当てで、各学校に一クラス分の授業ができるように配備する計画になっている。

「授業に使える」は15%

 このため、教員歴10年目、20年目の研修では、今年度からパソコン研修の時間が増やされているが、今後、これまで以上に先生たちの奮起が期待されている。なお、「操作できる」から一歩進んで、授業にまで使える先生の割合は全体の15.4%。88年の四倍になったが、前年に比べて1.1ポイントの増だった。

                                                                  読売新聞社

H-3.◆000020   (19961031TYM35011)

[おあしす]パソコンに自信を持って使いこなせる教師は6人に1人

          96.10.31  東京読売朝刊35頁 社会面(全267字)

 ◇…パソコンが急速に学校現場に普及しているが、自信を持って使いこなせる教師は、六人に一人に過ぎないことが、文部省調査でわかった。

 ◇…パソコン設置率は、同省が90年度に「教育用コンピュータ整備計画」をスタートさせて急増。今回の調査では、小学校で84.7%、中学校が99.7%、高校は100%に達していた。

 ◇…しかし、「授業で使える」と答えた教師は全体のわずか17%で、「操作できる」というレベルの教師も41.4%にとどまった。同省は「教師にはパソコンに強い子どもたちへの引け目があるのかもしれない」と分析、今後、サポート体制を検討する。

                                                                  読売新聞社

H-4.◆000029   (19970722SYM22002)

教員採用に必修のパソコン試験 「役立つか疑問」の声も/大分で全国初

          97.07.22  西部読売朝刊22頁(全527字)

 大分県公立学校教員の採用試験で、今年から必修となったパソコンの実技試験が21日、大分市内の高校で行われ、小、中学校教諭志望者など1,360人が挑戦した。文部省や同県教委によると、パソコン操作の技能を全受験生に問うのは全国で初めて。

 学科試験に続く二日目。マイクロソフト「Windows95」を使い、基本操作能力を問う実技(8問、15分間)で、面接や水泳などとともに試験に組み入れられた。

 大分県教委は、教育現場に導入が進んでいるパソコンを指導できるように、と昨年の試験から、小学校など一部の試験にパソコンの実技を取り入れた。試験監督官の一人によると、日ごろから使いこなしている人が多いうえに、昨年の試験の難易度などが情報として行き渡ったためか、ほとんどの受験生が落ち着いて操作していたという。

 中学校教諭志望の女子短大生(19)は「パソコンはデータの蓄積もでき、クラスや教科ごとの指導資料などを作るのに便利。実技試験はあった方がいい」と歓迎していた。

 小学校の先生を目指す男子学生(23)は「ふだんも使っているので戸惑いはなかったが、果たして、この試験が教育現場で役立つかは疑問。筆記や面接、水泳など他の実技を重視して欲しい」と話していた。

 

                                                                  読売新聞社

I.インプレス社 インターネット・ウォッチ

I-1.[教育]

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06:文部大臣が2003年までにすべての学校をインターネットに接続する方針を表明

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 町村信孝文部大臣は4日閣議後の記者会見で、2003年までにすべての学校をインターネットに接続する方針を明らかにした。

 会見では、全国のすべての国公私立の学校を対象に、2001年までに中・高等学校および特殊教育学校、2003年までに小学校をインターネットに接続するとした。また国公立の学校に関しては通信費やインターネット接続料として約81億円を地方交付税で措置するよう自治省に求めていくとしている。

 文部省によると、今年5月時点で、公立学校のインターネット接続率は全学校合計で9.8%、小学校に限ると7.3%にとどまっている。[Reported by kikuchi@impress.co.jp / 金丸雄一]

 

I-2.[教育]

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01:文部省らが教育現場でのインターネットの問題点を検討

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 文部省と郵政省は14日、教育現場でインターネットを利用する際の問題点などを検討するための研究会「教育分野におけるインターネットの活用促進に関する懇親会」を12月より設置する。

 この研究会では、インターネット上のわいせつ画像などへの対策として、現在市販されているフィルタリングソフトについて実際の効果や使い勝手などを検討する。また、インターネット利用にかかる通信料や接続料を一般ユーザーより割安にしたり、教材用ソフトの制作を助成する財政支援についても検討する。来年春までに結果をまとめ、関係業界などに働きかけていく。

 文部省では先に、2003年までにすべての学校をインターネットに接続する方針を表明しているが(本誌'97年11月5号参照)、今回の研究会設置は具体的な取り組みの一つ。[Reported by kikuchi@impress.co.jp/金丸雄一]

 

I-3.[コンピュータ教育とインターネット]

 コンピュータ教育の重要性が社会的に高まり、文部省も90年に「教育用コンピュータ整備計画」をスタートさせて以来、教育機関におけるコンピュータ普及率は急速に向上している。(今回の調査では、小学校で84.7%、中学校が99.7%、高校は100%に達していた。)しかしながら、コンピュータを最低限活用できる知識を得るコンピュータ・リテラシー教育は十分なものではない。実際にコンピュータを教えられる教員が極端に少ないことが問題である。この数の少なさによる教育内容の質も問題である。コンピュータを教えるための教育方法論も確立しておらず、どのような内容をどのレベルの教育機関で教えるべきかがはっきりしていない。つまり、コンピュータというものが、社会全体に一度に出現してきたため、小学校でも中学校でも大学やカルチャースクールでも同じことを教えている。コンピュータ教育という観点からは、好ましいものではないことは明白である。本来、コンピュータリテラシーは初等教育段階で修得し、より高度な利用方法を高等教育機関で学び実践すべきものである。

 教育機関でのインターネット教育が未成熟であるために、どのような問題が起きるかというと、世代間の差がはっきりしてくる、ネチケットといったモラル教育がなされない。コンピュータには親しむ世代であっても、普通科高校では大学受験科目とは縁遠いコンピュータ教育は無縁である。多くは、大学でも触れることなく、社会に出てから初めてコンピュータと接することになり、社内教育、独習、パソコンスクールで学ぶこととなる。

 

以 上