オコーナー判事は、判決に一部賛成し一部反対、この意見にレンキスト主席判事が同意。
オコーナー判事による一部賛成一部反対意見
私は、別意見として、なぜ1996年の通信品位法(CDA)をインターネット上に議会が「アダルト区域」を作ろうとしたことと大差ないものと見るのかを説明する。当裁判所の先例は、このような区域を作り出すことは憲法上問題とはなり得ないと判示している。しかしながら、この区域設定の目的は正しいのではあるが、当裁判所の先例が憲法に合致した「区域指定法(zoning law)」を作り出すために発展してきた過程の青写真からは脇道に逸れるものであるが故に、CDAの何カ所かは違憲なのである。
被上訴人側は、CDAの三つの条項について文面上の違憲主張を出している。その第一は、法廷意見が「みだらな情報伝達」条項と表現したものであり、知りながらわいせつ又はみだらなメッセージや画像を、送信者が18歳未満と知っている者に送信することは犯罪であるとする。47 U.S.C.A. 223条(a)項(1)号(B)(May 1996 Supp.)。法廷意見が「『明らかに不快な表示』」条項として一つに分類するもの(前掲11頁参照)は、実際は二つの別々の条項である。その第一は、知りながら明らかに不快なメッセージや画像を、特定の18歳未満の者に送信することは犯罪であるとする(「特定の人」条項)。223条(d)項(1)号(A)。その第二は、明らかに不快なメッセージや画像を「可能なあらゆる方法で」未成年者に表示することを刑事処罰する。("表示" 条項)である。223条(d)項(1)号(B)。これらの条項はいずれも、みだらな(若しくは明らかに不快な)情報データを、こうした言論を入手できるという修正第1条に基づく権利を持つ成人から遠ざけようとするものではない。Sable Communications of Cal. Inc. v. FCC, 492 U.S. 115,126頁(1989年)(みだらではあるがわいせつではない性的な表現は修正第1条により保護される)。よって、否定し得ないCDAの目的は、インターネット上のわいせつな情報データを未成年者がアクセスできない特定のエリアに隔離してしまうことである。S.Conf. Rep.No.104-230,189頁(1996年)。(CDAは「未成年者がみだらな情報データに曝されることから守るために・・・アクセス制限を課している」)。
「アダルト区域」を作り出すことは、決して新奇な概念ではない。州は長い間、成人が頻繁に出向く特定の事業に未成年者がアクセスすることを否定してきた(1)。州はまた、「未成年者に有害である」と思われる言論に未成年者がアクセスすることを否定してきた(2)。法廷意見は従前より、このような「区域指定法」を支持してきているが、それはこの法律が修正第1条に基づく成人および未成年者の権利を尊重する場合にだけである。つまり区域指定法というものは、(i)その法が成人向け情報データへ成人がアクセスすることを著しく制限しない、且つ(ii)未成年者が、禁止された情報データを読んだり見たりするのに修正第1条に基づく権利を持ち合わせていない、という場合に有効なのである。1997年現在に存在するインターネットに適用するならば、「表示」条項及び「みだらな通信」条項と「特定の人」条項の何らかの適用は、特定の状況下では保護される情報データへ成人がアクセスすることを制限することにおいて、この二つの制限原則の第一番目に忠実たり得なかった。しかしながら、私は法廷意見とは異なり、これらの状況下のみではこの条項を無効と判断していたであろう。
本件は、「区域」指定法は、成人がなおも規制された言論を入手できる限りにおいてのみ有効であることを明確にしている。それができないならば、その法は単に、入手することを権利上認めない言論から子供達を遠ざけるだけのものであり、憲法上保障された言論を入手する成人の権利を侵害し、事実上「成人の数を・・・子供向のものだけを見る人の数にまで減らしてしまう」のである。Butler v. Michigan, 352 U.S. 380,383頁(1957年)。修正第1条はこのような干渉を黙認しない。同上383頁参照。(「『若者のモラルを壊す目的』」の言葉や画像を含んだ本を---未成年者や成人に---販売することを禁じたミシガン州刑法を取り消す。)前掲Sable Communications判決(みだらではあるがわいせつでない営利的な電話メッセージを未成年者や成人に送信することを犯罪であるとした連邦法を無効とする。)、Bolger v. Youngs Drug Products Corp., 463 U.S. 60,74頁(1983年)。(要求もしていない避妊薬の広告を郵送することを禁止している連邦法を無効する)。しかしながら、もしその法律が憲法上保障された言論へ成人がアクセスすることを著しく制限しないのであれば、有効である。たとえば、Ginsberg v. New York, 390 U.S. 629,634頁(1968年)判決では、成人はポルノ雑誌を買うことができるのであるから、一部の未成年者にポルノ雑誌を売ることを商店主に禁ずるというニューヨーク州法を支持している。
Ginsberg判決の裁判所は、ニューヨーク州法は、文面上、未成年者へのアクセスを認めないのであるから憲法上認められる十分なアダルト区域を作り出したのである、と判示している。この裁判所は、アダルト区域は一旦作られてしまえば規制された言論に未成年者がアクセスすることを禁止しながら、一方で成人のアクセスを維持することができるということを、問題とはせずに---したがって必然的に推論したのである。今日まで、この推論を問題とする理由は存在しなかった。なぜならば、裁判所はこれまで、現実の世界---つまり「地域と本人確認」という二つの特徴付けにより「アダルト区域」を作ることを可能とする世界---で働く法をだけを考慮してきたからである。Lessig,Reading the Constitution in Cyberspace, 45 Emory L. J. 869,886頁(1996年)参照。未成年者は、成人向けダンスショーをといった興行を行っている設備に入ることによってのみ、そのような興行を見ることができる。そして、未成年者がそのようにしたならば、自らの本人確認(結果としては年齢)を完全にごまかすことはできないであろう。よって、地域と本人確認という双子の特徴付けは、子供達がそのような設備に入ることを防ぎ、成人が入るのを邪魔しないということを可能にするのである。
電子の世界は根本的に異なっている。サイバースペースは、電子の通り道を相互接続したものに過ぎないので、発言者や聞き手が自らの素性を隠すことを可能にしている。サイバースペースは、地理的に何らかの形態を不可避的に反映している。たとえば、チャットルーム、ウェブサイトはインターネット上で固定された「場所」に存在している。ユーザーは自らの素性や年齢を明らかにすることなくインターネット上でメッセージを発信したり受信したりできるのであるから(前掲書Lessig,901参照)、今のところは、或る者をその者の素性によって特定のメッセージにアクセスできないように排除することはできない。
サイバースペースは、もう一つの基本的な方法において現実世界と異なる。つまりサイバースペースは適応性が高いのである。よって、サイバースペースの中に防壁を築きこの防壁が素性によって遮断させることも可能であり、サイバースペースをより現実世界に近いものとし、結果として、区域指定法により馴染みやすいものとすることができる。サイバースペースのこの変化は今進行中である。前掲書Lessig,888-889頁。同書887頁(サイバースペースは「相対的に区分けされていない場から異常なまでに上手く区分けされた宇宙へと・・・動きつつある」)。インターネットの発言者(インターネット上に情報データを置くユーザー)は、「ゲートウェイ」を用いることによりサイバースペースそのものを区分けし始めている。このような技術は、あたかもナイトクラブに入るのを許可するかどうかを用心棒が自動車免許証でチェックするように、インターネットユーザーがサイバースペース上の特定のエリアにアクセスできるようにする前に、自分自身についての情報---恐らくは成人であることを証明する番号もしくはクレジットカード番号---を入力することを要求する。929 F.Supp.824, 845頁(ED Pa. 1996年)。情報にアクセスするインターネットユーザーは、ロックボックスを付けて子供がテレビで何を見るかを管理する親のように、サイバースペースそのものを区分けしようとするのではなく、サイバースペースの中で情報にアクセスする自らの権限を制限しようとしてきた。ユーザーが区分けされるのは、スクリーニング・ソフトウェア(Cyber PatrolとかSurfWatchなど)やスクリーニング機能の付いたブラウザによって可能となる。この両者は、「アダルト」サイトと結びついたキーワードをアドレスと文字から探し、もしユーザーが望むのであれば、そのようなサイトへのアクセスを防ぐのである。前掲書839-842頁。Platform for Internet Content Selection(PICS)プロジェクトは、インターネットの発言者が、あらゆるスクリーニングプログラムによって理解されるコードでもって、自らの発言内容をランク付けすることを奨励することにより、ユーザーによる区分けを可能にすることを計画している。前掲書838-839頁。
このような進歩にもかかわらず、サイバースペースの変革は完全なものではない。 ゲートウェイ技術がこれまでの間World Wide Web上で利用可能であったけれども(前掲書845頁、Shea v. Reno, 930 F. Supp.916,933-934頁(SDNY 1996年))、すべてのウェブ発信者にとって利用可能ではなく(929 F. Supp.,845-846頁)、まさに今技術的にチャットルームとUSENETニューズグループで利用可能となりつつある(Federal Pratiesの書面37-38頁)。ゲートウェイ技術はサイバースペース上のどこにでもあるわけではない。ゲートウェイ技術無くしては「年齢確認の手段がない」のであるから、サイバースペースが未だ殆どが区分けされていないままでいる---そして区分けできないままである。929 F. Supp., 846頁、前掲Shea判決934頁参照。ユーザーが区分けすることもまた、幼児期にある。ユーザーによる区分けが効果的になるには、(i)同意されたコード(もしくは"目印") が存在していなければならないこと、(ii)スクリーニング・ソフトウェアかスクリーニング機能を持ったブラウザがその「目印」を認識できなければならないこと、(iii)これらのプログラムが広く一般に利用可能で--インターネットユーザーにより広く利用されなければならない、のである。現在のところ、この条件はどれも現実となっていない。スクリーニング・ソフトウェアは「今日では広く用いられていない」のであり「ほんの少数のブラウザがスクリーニング機能を持っている」のである。前掲Shea判決、945-946頁。これより更に、これらのプログラムが認識できるように合意された「目印」が存在しないのである。929 F. Supp., 848頁、前掲Shea判決945頁。
インターネット上での終局的な区分けの見通しは有望であるように見えるけれども、私は、裁判所は今日存在するインターネットにCDAが適用される時のCDAの合憲性を判断しなければならないという法廷意見の判断には同意する。前掲36頁。サイバースペースの現状がこうであったとして、私は、「表示」条項は基準に達し得ないという法廷意見の判断に同意する。ゲートウェイ技術がサイバースペースでくまなく利用可能となる時まで、それは1997年ではなく、言論を「アダルト区域」だけに留め置くことは不可能なのであるから、発信者が表示した言論が成人だけに届くのだと発信者が合理的に確信することはできない。よって、発言者がCDAに基づく責任を回避する唯一の方法は、みだらな言論を用いることを完全に止めることである。しかし、この強制された沈黙は、成人がこの種の言論を行い手に入れるという修正第1条に基づく権利を侵害し、事実上「[インターネット上の]成人の数を子供向のものだけを見る人の数にまでに減らしてしまう」のである。Butler判決,352 U.S.,383頁。結果として、「表示」条項は精査に耐えることができない。賛成同旨、Sable Communications判決, 492 U.S.126-131頁、Bolger v. Youngs Drug Products Corp., 463 U.S. 73-75頁。
「みだらな通信」条項と「特定の人」条項はより近い問題点を呈している。なぜならばこの二条項のあらゆる適用において違憲ではないからである。上で論じたように、「みだらな通信」条項は、知りながらみだらなメッセージを送信者が18歳未満と知っている者に送信することを犯罪としている。47 U.S.C.A.223条(a)項(1)号(B)(May 1996 Supp.)。「特定の人」条項は、みだらなメッセージを意図的に受け取る者が未成年者であることを送信者が知っていることを明確に要求してはいないが、同様の行為を禁止している。223条(d)項(1)号(A)。上訴人は、この条項がこのような知りながらという要件を科していると法廷意見が解釈すべきことを主張しており(Federal Parties書類25-27頁参照)、私もそうしたであろう。Edward J. DeBartolo Corp. v. Florida Gulf Coast Building & Constr. Trades Council, 485 U.S. 568, 575頁(1988年)(「制定法の解釈として他に取り得る解釈が重大な憲法問題を提起する時は、当裁判所は、その問題を回避するような解釈が議会の意図と全く正反対ではない限り、問題を回避するようにその制定法を解釈するであろう」)。
このように解釈するならば、一人の成人と一人以上の未成年者だけが参加している会話に両条項を適用することは、合憲である。たとえば、或る成人が受信者は未成年者と知りながら電子メールを送った場合、もしくは或る成人と未成年者が自分達だけでもしくは他の未成年者とチャットルームで会話をしたような場合である。このような文脈の中では、これらの条項は、Ginsberg判決で当裁判所が支持した法理と何ら異なるところはない。成人が未成年者に話すであろうことを制限することは、別の成人と会話するという成人の権限を制限するものではない。成人はチャットルームで他の成人にみだらに話しかけることができなくなっているわけではなく(その会話に参加する他の成人がいないからである)、他の成人にみだらな電子メールを送ることは自由のままである。問題となっている世界では、成人一人だけが居り、その世界に居る成人はみだらな言論を止める権限を持ち、結果として「アダルト」区域にある部屋の中だけにそのような言論を閉じこめておく権限を持つのである。
しかしながら、Ginsberg判決への類推は、一人以上の成人が会話の当事者であるとき崩れる。それまで成人のみで占拠されていたチャットルームに或る未成年者が入って来たとすると、CDAは、事実上チャットルームに居る成人にみだらな言論を止めさせることを要求する。それができないならば、その成人達は、特定の人達に(その内の一人は未成年者である人達に)みだらなメッセージを送ったのであるから、「みだらな通信」条項と「特定の人」条項に基づき、そのグループに対して行ったあらゆるみだらな言質に対して、刑事訴追を受けるかも知れない。賛成同旨前掲30頁。したがって、CDAは、未成年者が書店に入った瞬間、書籍店主がポルノ雑誌を誰かに売ることを犯罪とする法に近いということになる。未成年者を書店から完全に追い出す合理的な代替策として、このような法が現実世界の中では合憲となるかも知れないと考えても、サイバースペースでチャットルームから未成年者を追い出す方法が無いことが、これらチャットルームにおけるみだらな言論に成人が没頭する権利を制限しているのである。「みだらな通信」条項と「特定の人」条項はこの欠陥を併せ持っているのである。
しかし、これら二つの条項は、あらゆる状況において成人の言論を侵害することはない。そして、以下に述べるように、未成年者が読んだり見たりする権利を持つ言論の大部分に未成年者がアクセスすることを制限しているという意味において、この条項は広範であるとは、私は判断していない。したがって、CDAは幾つかの状況には憲法上問題なく適用できるのである。一般には、この事実故に、法廷意見は直接的な文面上の違憲主張を拒絶せざるを得なかったであろう。United States v. Salerno, 481 U.S. 739,745頁(1987年)。(「立法府による法に対する文面上の違憲主張は、主張者が・・・その法が有効となるであろう状況は存在しないことを立証[できた時のみ成功する]のである」)。しかしながら、被上訴人側の主張は修正第1条に基づいており、被上訴人側は、CDAは文面上から無効であり、CDAは「かなり広範」であり、つまり「あまりにも広く広がり・・・[そして]憲法上保障されている言論のかなりの部分を処罰するものである」と主張した。Forsyth County v. Nationalist Movement, 505 U.S. 123, 130頁(1992年)。被上訴人側アメリカ自由連合他提出書面48、被上訴人側アメリカ自由人権協会他提出書面39-41参照。何人の成人がその通信の聴視者の一部となっていたかにかかわらず、成人と未成年者の間のいかなる通信をも包摂するという点において、この条項が広範であることについて私は法廷意見に同意する。
しかしながら、この結論は問題を終わらせてはいない。 ここでと同様に、「制定法の違憲主張をしている当事者が、この広範に亘る制定法が処罰しようとする保障された言論に好んで関与する人々である場合、・・・それが余りにも広く適用されこの適用なければ元のままであり続けるという限りにおいて、その制定法は即座に無効と宣言され得る。」Brockett v. Spokane Arcades, Inc., 472 U.S. 491,504頁(1985年)。議会が一人の成人と一人以上の未成年者での特定の通信を禁止しようと意図していたことに疑いはない。47 U.S.C.A. 223条(a)項(1)号(B)(May 1996 Supp.)参照。(「何らかのみだらな通信を知りながら通信の受信者が18歳未満であることを知りながら、[なんらかのみだらな通信]を送信した者は・・・だれでも」処罰する)。223条(d)項(1)号(A)(「特定の者もしくは18歳未満の者に[明らかに不快なメッセージ]を送った者」は処罰する)。広範であるこれらの条項の翻案では違憲であると宣言されることを知っていたならば、議会はより適用範囲の狭い条項の翻案を成立させたであろうことも疑う余地はない。47 U.S.C. 608条(「もし・・・[CDAのいずれかの条項]が適用されることが、あらゆる人とか状況に適用することが無効であると判断されれば、・・・そのような条項を別の人や状況に適用することは、それによって影響をうけるべきではない」)。したがって、私は「みだらな通信」条項と「特定の人」条項を、通信を始めた当事者が受信する者すべてが未成年者であることを知っていたインターネット上の通信に適用するという限りにおいて、この両条項を支持するであろう。
CDAが修正第1条に基づく未成年者の権利を実質的に侵害しているか否か、そしてこれにより有効な区域指定法の二番目の性質に牴触するか否かは、緊密な問題提起をしている。Ginsberg判決において、当裁判所が支持したニューヨーク州法は「未成年者に有害な」雑誌を未成年者に売ることを禁じていた。この州法の下で、未成年者にとってわいせつである時にのみ雑誌は「未成年者に有害」なのであった。390 U.S. 632-633頁。わいせつな言論が修正第1条により保障されていないこと(Roth v. United States, 354 U.S. 476,485頁(1957年))、そしてニューヨーク州は憲法上未成年者に対するわいせつ性の定義を調整することが行えること(390 U.S., 638頁)を指摘しながら、法廷意見はその法が「憲法上未成年者に保障されている表現の自由という領域を侵害」してはいないと判示した。前掲637頁。したがって、ニューヨーク州は修正第1条に基づく未成年者の権利を侵害してはいなかったのである。Erznoznik v. Jacksonville, 422 U.S. 205, 213頁(1975年)(「未成年者にとってでさえわいせつ」ではなかった裸を禁止した市条例を取り消した事例)参照。
法廷意見は、未成年者の修正第1条に基づく権利を実質的に侵害しているのであるから、CDAは文面上広範過ぎるという議論を「承認も否定も」しなかった。前掲32頁。私はそれを否定する。Ginsberg判決は、未成年者にとってわいせつな情報データにアクセスを合憲的に否定し得るということを確立した。Ginsberg判決が説明するように、もし情報データが(i)「成人の社会全体としての一般的な基準に照らして、未成年者にとって何が適切かと考える時、明らかに不快」である場合、(ii)未成年者の扇情的な好奇心に訴えかけるものである場合、(iii)「未成年者にとって社会的重要性の全くない」場合、情報データは未成年者にとってわいせつなのである。390 U.S., 633頁。CDAは、未成年者が「明らかに不快な」情報データを入手する権利を否定しているのであるから---たとえそれが未成年者には何らかの価値があるとしても、そしてその情報データが未成年者の扇情的な好奇心に訴えかけるものではないとしても---、Ginsberg判決における「未成年者に有害」という基準を議会が採らなかったことは、CDAは「みだらな」(たとえば「明らかに不快な」)ではあるが未成年者にはわいせつではない言論を禁止することができるということを意味している。
私はこの可能性を否定しない。しかし文面上の違憲主張を勝ち取るためには、原告が「いくつかの」広範性を示すだけでは十分ではない。本件には、「現実に」かつ「実質的に」広範であることの証明が必要であり(Broadrick v. Oklahoma, 413 U.S. 601, 615頁(1973年))、本件において被上訴人はこの証明責任を果たしていない。私の考えでは、未成年者には憲法上保障されているがCDAにより禁止される言論の世界は、---たとえば「明らかに不快な」情報データの世界であるが、それでも未成年者に何らかの価値があり未成年者の扇情的な好奇心に訴えかけるものではない世界は---とても小さいものである。被上訴人はこの世界に当てはまる言論の実例を挙げなかったし、なぜその宇宙は「その制定法が合法的に一掃してしまうことに関連して」実質的なものであるかを説明しようとはしなかった。前掲同。CDAは何らかの「価値」をもつ情報データを入手する未成年者の権利を否定するかもしれない(前掲32-33頁)ということは、殆ど的を外している。刑務所内での強姦やヌード芸術についての議論(前掲同参照)は、成人には教育的価値があるかもしれないが、この議論は未成年者に同様の価値があるわけではなく、Ginsberg判決において、未成年者は「未成年者にとって社会的に重要性のある」明らかに不快な情報データを入手するという修正第1条に基づく権利だけを有しているのである。390 U.S., 633頁(強調附加)。また、法廷記録の中には、「成人から未成年者へ送信される電子メールの多くは家族間の会話である」という主張を支持する証拠はなく(前掲18頁註32)、このような言論は絶対的にいかなる規制からも自由であるという法命題に対する支持もなかった。したがって、私の考えでは、CDAは憲法上保障された未成年者の権利の大部分に重くのしかかる負荷ではない。
このように、区域指定法としてのCDAの合憲性は、CDAが実質的に修正第1条に基づく成人の権利を侵害している程度によることとなる。成人の権利は、1人以上の成人が含まれる通信に「表示」条項によるものと「みだらな通信」条項と「特定の人」条項によるものによって適用される時のみ、侵害されているのであるから、私は、その範囲でCDAは無効とする。「みだらな通信」条項と「特定の人」条項が、1人の成人と1人以上の未成年者との通信においてみだらな言論をもちいることを禁ずる限りは、これらの条項は支持されるべきである。法廷意見はこれとは逆の結論に達しており、この点において私は恭しく反対と判断するものである。
註
[註1]たとえば以下の州法参照。Alaska Stat. Ann. 11.66.300条(1996年)(「成人の遊興」場に未成年者は入れない)、Ariz. Rev. Stat. Ann. 13-3556条(1989年)(人々が身体を露出するところに未成年者は入れない)、 Ark. Code Ann. 5-27-223条, 5-27-224条(1993年)(プール・ルームとバーには未成年者は入れない)、Colo. Rev. Stat. 18-7-502条(2)(1986年)(「子供にとって有害な」映画やショーを行っている場所に未成年者は入れない)、 Del. Code Ann., Tit. 11, 1365条(i)(2)(1995年)(同)、D. C. Code Ann. 22-2001条(b)(1)(B)(1996)(同)、Fla. Stat. 847.013条(2)(1994)(同)、Ga. Code Ann. 16-12-103条(b)(1996年)(同)、Haw. Rev. Stat. 712-1215条(1)(b)(1994年)(「未成年者とってポルノ」である映画やショーの建物に未成年者は入れない)、Idaho Code 18-1515条(2)(1987年)(「未成年者に有害な」映画やショーを行っている場所に未成年者は入れない)、La. Rev. Stat. Ann. 14:91.11条(B)(West 1986年)(性行為を描写したり未成年者の扇情的な好奇心に訴えるような映画を上映する場所には未成年者は入れない)、Md. Ann. Code, Art. 27, 416E条(1996年)(特定の列挙された行為が行われたり演じられている施設には未成年者は入れない)、Mich. Comp. Laws 750.141条(1991年)(アルコールが販売されている場所に大人同伴でない未成年者は入れない)、Minn. Stat. 617.294条(1987年 and Supp. 1997年)(「未成年者にとって有害な」映画やショーを行っている場所に未成年者は入れない)、Miss. Code Ann. 97-5-11条(1994年)(プール・ルーム、ビリヤードホール、またはアルコールが売られている場所に未成年者は入れない)、Mo. Rev. Stat. 573.507条(1995年)(成人のキャバレーに未成年者は入れない)、Neb. Rev. Stat. 28-809条(1995年)(「未成年者に有害な」映画やショーを行っている場所に未成年者は入れない)、Nev. Rev. Stat. 201.265条(3)(1997年)(同)、N. H. Rev. Stat. Ann. 571-B:2条(II)(1986年)(同)、N. M. Stat. Ann. 30-37-3条(1989年)(同)、N. Y. Penal Law 235.21条(2)(McKinney 1989年)(同)、N. D. Cent. Code 12.1-27.1-03条(1985年 and Supp. 1995年)(同)、18 Pa. Cons. Stat. 5903条(a)(Supp. 1997年)(同)、S. D. Comp. Laws Ann. 22-24-30条(1988年)(同)、Tenn. Code Ann. 39-17-911条(b)(1991年)(同)、Vt. Stat. Ann., Tit. 13, 2802条(b)(1974年)(同)、Va. Code Ann. 18.2-391条(1996年)(同)。
[註2]たとえば以下の州法参照。Ala. Code 13A-12-200.5条(1994年)、Ariz. Rev. Stat. Ann. 13-3506条(1989年)、Ark. Code Ann. 5-68-502(1993年)、Cal. Penal Code Ann. 313.1条(West Supp. 1997年)、Colo. Rev. Stat. 18-7-502条(1)(1986年)、Conn. Gen. Stat. 53a-196条(1994年)、Del. Code Ann., Tit. 11, 1365条(i)(1)(1995年)、D. C. Code Ann. 22-2001条(b)(1)(A)(1996年)、Fla. Stat. 847.012条(1994年)、Ga. Code Ann. 16-12-103(a)条(1996年)、Haw. Rev. Stat. 712-1215条(1)(1994年)、Idaho Code 18-1515条(1)(1987年)、Ill. Comp. Stat., ch. 720, 5/11-21条(1993年)、Ind. Code 35-49-3-3条(1)(Supp. 1996年)、Iowa Code 728.2条(1993年)、 Kan. Stat. Ann. 21-4301c(a)(2)条(1988年)、La. Rev. Stat. Ann. 14:91.11(B)条(West 1986年)、Md. Ann. Code, Art. 27, 416B条(1996年)、Mass. Gen. Laws, ch. 272, 28条(1992年)、Minn. Stat. 617.293条(1987年 and Supp. 1997年)、Miss. Code Ann. 97-5-11条(1994年)、Mo. Rev. Stat. 573.040条(1995年)、Mont. Code Ann. 45-8-206条(1995年)、Neb. Rev. Stat. 28-808条(1995年)、Nev. Rev. Stat. 201.265(1)条,同(2)条(1997年)、N. H. Rev. Stat. Ann. 571-B:2(I)条(1986年)、N. M. Stat. Ann. 30-37-2条(1989年)、N. Y. Penal Law 235.21条(1)(McKinney 1989年)、N. C. Gen. Stat. 14-190.15(a)条(1993年)、N. D. Cent. Code 12.1-27.1-03条(1985年 and Supp. 1995年)、Ohio Rev. Code Ann. 2907.31(A)(1)条(Supp. 1997年)、Okla. Stat., Tit. 21, 1040.76条(2)(Supp. 1997年)、18 Pa. Cons. Stat. 5903(c)条(Supp. 1997年)、R. I. Gen. Laws 11-31-10(a)条(1996)、S. C. Code Ann. 16-15-385(A)条(Supp. 1996年)、 S. D. Comp. Laws Ann. 22-24-28条(1988年)、Tenn. Code Ann. 39-17-911条(a)(1991年)、Tex Penal Code Ann. 43.24条(b)(1994年)、Utah Code Ann. 76-10-1206条(2)(1995年)、Vt. Stat. Ann., Tit. 13, 2802条(a)(1974年)、Va. Code Ann. 18.2-391条(1996年)、Wash. Rev. Code 9.68.060条(1988年 and Supp. 1997年)、Wis. Stat. 948.11条(2)(Supp. 1995年)。
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