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第二編 物権 第二編 物権   
第一章 総則 第一章 総則   
(物権の創設)    
第百七十五条 物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。 第百七十五条  物権ハ本法其他ノ法律ニ定ムルモノノ外之ヲ創設スルコトヲ得ス  
(物権の設定及び移転)    
第百七十六条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。 第百七十六条  物権ノ設定及ヒ移転ハ当事者ノ意思表示ノミニ因リテ其効力ヲ生ス  
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)    
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。 第百七十七条  不動産ニ関スル物権ノ得喪及ヒ変更ハ登記法ノ定ムル所ニ従ヒ其登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス  
(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)    
第百七十八条 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。 第百七十八条  動産ニ関スル物権ノ譲渡ハ其動産ノ引渡アルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス  
(混同)    
第百七十九条 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。 第百七十九条  同一物ニ付キ所有権及ヒ他ノ物権カ同一人ニ帰シタルトキハ其物権ハ消滅ス但其物又ハ其物権カ第三者ノ権利ノ目的タルトキハ此限ニ在ラス  
2 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。 2 所有権以外ノ物権及ヒ之ヲ目的トスル他ノ権利カ同一人ニ帰シタルトキハ其権利ハ消滅ス此場合ニ於テハ前項但書ノ規定ヲ準用ス  
3 前二項の規定は、占有権については、適用しない。 3 前二項ノ規定ハ占有権ニハ之ヲ適用セス  
第二章 占有権 第二章 占有権   
第一節 占有権の取得 第一節 占有権ノ取得   
(占有権の取得)    
第百八十条 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。 第百八十条  占有権ハ自己ノ為メニスル意思ヲ以テ物ヲ所持スルニ因リテ之ヲ取得ス  
(代理占有)    
第百八十一条 占有権は、代理人によって取得することができる。 第百八十一条  占有権ハ代理人ニ依リテ之ヲ取得スルコトヲ得  
(現実の引渡し及び簡易の引渡し)    
第百八十二条 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。 第百八十二条  占有権ノ譲渡ハ占有物ノ引渡ニ依リテ之ヲ為ス  
2 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。 2 譲受人又ハ其代理人カ現ニ占有物ヲ所持スル場合ニ於テハ占有権ノ譲渡ハ当事者ノ意思表示ノミニ依リテ之ヲ為スコトヲ得  
(占有改定)    
第百八十三条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。 第百八十三条  代理人カ自己ノ占有物ヲ爾後本人ノ為メニ占有スヘキ意思ヲ表示シタルトキハ本人ハ之ニ因リテ占有権ヲ取得ス  
(指図による占有移転)    
第百八十四条 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。 第百八十四条  代理人ニ依リテ占有ヲ為ス場合ニ於テ本人カ其代理人ニ対シ爾後第三者ノ為メニ其物ヲ占有スヘキ旨ヲ命シ第三者之ヲ承諾シタルトキハ其第三者ハ占有権ヲ取得ス  
(占有の性質の変更)    
第百八十五条 権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。 第百八十五条  権原ノ性質上占有者ニ所有ノ意思ナキモノトスル場合ニ於テハ其占有者カ自己ニ占有ヲ為サシメタル者ニ対シ所有ノ意思アルコトヲ表示シ又ハ新権原ニ因リ更ニ所有ノ意思ヲ以テ占有ヲ始ムルニ非サレハ占有ハ其性質ヲ変セス  
(占有の態様等に関する推定)    
第百八十六条 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。 第百八十六条  占有者ハ所有ノ意思ヲ以テ善意、平穏且公然ニ占有ヲ為スモノト推定ス  
2 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。 2 前後両時ニ於テ占有ヲ為シタル証拠アルトキハ占有ハ其間継続シタルモノト推定ス  
(占有の承継)    
第百八十七条 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。 第百八十七条  占有者ノ承継人ハ其選択ニ従ヒ自己ノ占有ノミヲ主張シ又ハ自己ノ占有ニ前主ノ占有ヲ併セテ之ヲ主張スルコトヲ得  
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。 2 前主ノ占有ヲ併セテ主張スル場合ニ於テハ其瑕疵モ亦之ヲ承継ス  
第二節 占有権の効力 第二節 占有権ノ効力   
(占有物について行使する権利の適法の推定)    
第百八十八条 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。 第百八十八条  占有者カ占有物ノ上ニ行使スル権利ハ之ヲ適法ニ有スルモノト推定ス  
(善意の占有者による果実の取得等)    
第百八十九条 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。 第百八十九条  善意ノ占有者ハ占有物ヨリ生スル果実ヲ取得ス  
2 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。 2 善意ノ占有者カ本権ノ訴ニ於テ敗訴シタルトキハ其起訴ノ時ヨリ悪意ノ占有者ト看做ス  
(悪意の占有者による果実の返還等)    
第百九十条 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。 第百九十条  悪意ノ占有者ハ果実ヲ返還シ且其既ニ消費シ、過失ニ因リテ毀損シ又ハ収取ヲ怠リタル果実ノ代価ヲ償還スル義務ヲ負フ  
2 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。 2 前項ノ規定ハ強暴又ハ隠秘ニ因ル占有者ニ之ヲ準用ス  
(占有者による損害賠償)    
第百九十一条 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。 第百九十一条  占有物カ占有者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ悪意ノ占有者ハ其回復者ニ対シ其損害ノ全部ヲ賠償スル義務ヲ負ヒ善意ノ占有者ハ其滅失又ハ毀損ニ因リテ現ニ利益ヲ受クル限度ニ於テ賠償ヲ為ス義務ヲ負フ但所有ノ意思ナキ占有者ハ其善意ナルトキト雖モ全部ノ賠償ヲ為スコトヲ要ス  
(即時取得)    
第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。 第百九十二条  平穏且公然ニ動産ノ占有ヲ始メタル者カ善意ニシテ且過失ナキトキハ即時ニ其動産ノ上ニ行使スル権利ヲ取得ス 平穏,公然かつ善意無過失で動産の占有を始めた者が,その動産について行使する権利の取得(即時取得)をするのは,取引行為によって占有を始めた場合に限られる旨を明らかにしている。
(盗品又は遺失物の回復)    
第百九十三条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。 第百九十三条  前条ノ場合ニ於テ占有物カ盗品又ハ遺失物ナルトキハ被害者又ハ遺失主ハ盗難又ハ遺失ノ時ヨリ二年間占有者ニ対シテ其物ノ回復ヲ請求スルコトヲ得  
第百九十四条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。 第百九十四条  占有者カ盗品又ハ遺失物ヲ競売若クハ公ノ市場ニ於テ又ハ其物ト同種ノ物ヲ販売スル商人ヨリ善意ニテ買受ケタルトキハ被害者又ハ遺失主ハ占有者カ払ヒタル代価ヲ弁償スルニ非サレハ其物ヲ回復スルコトヲ得ス  
(動物の占有による権利の取得)    
第百九十五条 家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。 第百九十五条  他人カ飼養セシ家畜外ノ動物ヲ占有スル者ハ其占有ノ始善意ニシテ且逃失ノ時ヨリ一个月内ニ飼養主ヨリ回復ノ請求ヲ受ケサルトキハ其動物ノ上ニ行使スル権利ヲ取得ス  
(占有者による費用の償還請求)    
第百九十六条 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。 第百九十六条  占有者カ占有物ヲ返還スル場合ニ於テハ其物ノ保存ノ為メニ費シタル金額其他ノ必要費ヲ回復者ヨリ償還セシムルコトヲ得但占有者カ果実ヲ取得シタル場合ニ於テハ通常ノ必要費ハ其負担ニ帰ス  
2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。 2 占有者カ占有物ノ改良ノ為メニ費シタル金額其他ノ有益費ニ付テハ其価格ノ増加カ現存スル場合ニ限リ回復者ノ選択ニ従ヒ其費シタル金額又ハ増価額ヲ償還セシムルコトヲ得但悪意ノ占有者ニ対シテハ裁判所ハ回復者ノ請求ニ因リ之ニ相当ノ期限ヲ許与スルコトヲ得  
(占有の訴え)    
第百九十七条 占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。 第百九十七条  占有者ハ後五条ノ規定ニ従ヒ占有ノ訴ヲ提起スルコトヲ得他人ノ為メニ占有ヲ為ス者亦同シ  
(占有保持の訴え)    
第百九十八条 占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。 第百九十八条  占有者カ其占有ヲ妨害セラレタルトキハ占有保持ノ訴ニ依リ其妨害ノ停止及ヒ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得  
(占有保全の訴え)    
第百九十九条 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。 第百九十九条  占有者カ其占有ヲ妨害セラルル虞アルトキハ占有保全ノ訴ニ依リ其妨害ノ予防又ハ損害賠償ノ担保ヲ請求スルコトヲ得  
(占有回収の訴え)    
第二百条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。 第二百条  占有者カ其占有ヲ奪ハレタルトキハ占有回収ノ訴ニ依リ其物ノ返還及ヒ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得  
2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。 2 占有回収ノ訴ハ侵奪者ノ特定承継人ニ対シテ之ヲ提起スルコトヲ得ス但其承継人カ侵奪ノ事実ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス  
(占有の訴えの提起期間)    
第二百一条 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。 第二百一条  占有保持ノ訴ハ妨害ノ存スル間又ハ其止ミタル後一年内ニ之ヲ提起スルコトヲ要ス但工事ニ因リ占有物ニ損害ヲ生シタル場合ニ於テ其工事著手ノ時ヨリ一年ヲ経過シ又ハ其工事ノ竣成シタルトキハ之ヲ提起スルコトヲ得ス  
2 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。 2 占有保全ノ訴ハ妨害ノ危険ノ存スル間ハ之ヲ提起スルコトヲ得但工事ニ因リ占有物ニ損害ヲ生スル虞アルトキハ前項但書ノ規定ヲ準用ス  
3 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。 3 占有回収ノ訴ハ侵奪ノ時ヨリ一年内ニ之ヲ提起スルコトヲ要ス  
(本権の訴えとの関係)    
第二百二条 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。 第二百二条  占有ノ訴ハ本権ノ訴ト互ニ相妨クルコトナシ  
2 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。 2 占有ノ訴ハ本権ニ関スル理由ニ基キテ之ヲ裁判スルコトヲ得ス  
第三節 占有権の消滅 第三節 占有権ノ消滅   
(占有権の消滅事由)    
第二百三条 占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。 第二百三条  占有権ハ占有者カ占有ノ意思ヲ抛棄シ又ハ占有物ノ所持ヲ失フニ因リテ消滅ス但占有者カ占有回収ノ訴ヲ提起シタルトキハ此限ニ在ラス  
(代理占有権の消滅事由)    
第二百四条 代理人によって占有をする場合には、占有権は、次に掲げる事由によって消滅する。 第二百四条  代理人ニ依リテ占有ヲ為ス場合ニ於テハ占有権ハ左ノ事由ニ因リテ消滅ス  
一 本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。 一  本人カ代理人ヲシテ占有ヲ為サシムル意思ヲ抛棄シタルコト  
二 代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。 二  代理人カ本人ニ対シ爾後自己又ハ第三者ノ為メニ占有物ヲ所持スヘキ意思ヲ表示シタルコト  
三 代理人が占有物の所持を失ったこと。 三  代理人カ占有物ノ所持ヲ失ヒタルコト  
2 占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。 2 占有権ハ代理権ノ消滅ノミニ因リテ消滅セス  
第四節 準占有 第四節 準占有   
第二百五条 この章の規定は、自己のためにする意思をもって財産権の行使をする場合について準用する。 第二百五条  本章ノ規定ハ自己ノ為メニスル意思ヲ以テ財産権ノ行使ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス  
第三章 所有権 第三章 所有権   
第一節 所有権の限界 第一節 所有権ノ限界   
第一款 所有権の内容及び範囲    
(所有権の内容)    
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。 第二百六条  所有者ハ法令ノ制限内ニ於テ自由ニ其所有物ノ使用、収益及ヒ処分ヲ為ス権利ヲ有ス  
(土地所有権の範囲)    
第二百七条 土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。 第二百七条  土地ノ所有権ハ法令ノ制限内ニ於テ其土地ノ上下ニ及フ  
第二百八条 削除 第二百八条  削除  
第二款 相隣関係    
(隣地の使用請求)    
第二百九条 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。 第二百九条  土地ノ所有者ハ疆界又ハ其近傍ニ於テ牆壁若クハ建物ヲ築造シ又ハ之ヲ修繕スル為メ必要ナル範囲内ニ於テ隣地ノ使用ヲ請求スルコトヲ得但隣人ノ承諾アルニ非サレハ其住家ニ立入ルコトヲ得ス  
2 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。 2 前項ノ場合ニ於テ隣人カ損害ヲ受ケタルトキハ其償金ヲ請求スルコトヲ得  
(公道に至るための他の土地の通行権)    
第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。 第二百十条  或土地カ他ノ土地ニ囲繞セラレテ公路ニ通セサルトキハ其土地ノ所有者ハ公路ニ至ル為メ囲繞地ヲ通行スルコトヲ得  
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。 2 池沼、河渠若クハ海洋ニ由ルニ非サレハ他ニ通スルコト能ハス又ハ崖岸アリテ土地ト公路ト著シキ高低ヲ為ストキ亦同シ  
第二百十一条 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。 第二百十一条  前条ノ場合ニ於テ通行ノ場所及ヒ方法ハ通行権ヲ有スル者ノ為メニ必要ニシテ且囲繞地ノ為メニ損害最モ少キモノヲ選フコトヲ要ス  
2 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。 2 通行権ヲ有スル者ハ必要アルトキハ通路ヲ開設スルコトヲ得  
第二百十二条 第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。 第二百十二条  通行権ヲ有スル者ハ通行地ノ損害ニ対シテ償金ヲ払フコトヲ要ス但通路開設ノ為メニ生シタル損害ニ対スルモノヲ除ク外一年毎ニ其償金ヲ払フコトヲ得  
第二百十三条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。 第二百十三条  分割ニ因リ公路ニ通セサル土地ヲ生シタルトキハ其土地ノ所有者ハ公路ニ至ル為メ他ノ分割者ノ所有地ノミヲ通行スルコトヲ得此場合ニ於テハ償金ヲ払フコトヲ要セス  
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。 2 前項ノ規定ハ土地ノ所有者カ其土地ノ一部ヲ譲渡シタル場合ニ之ヲ準用ス  
(自然水流に対する妨害の禁止)    
第二百十四条 土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。 第二百十四条  土地ノ所有者ハ隣地ヨリ水ノ自然ニ流レ来ルヲ妨クルコトヲ得ス  
(水流の障害の除去)    
第二百十五条 水流が天災その他避けることのできない事変により低地において閉塞したときは、高地の所有者は、自己の費用で、水流の障害を除去するため必要な工事をすることができる。 第二百十五条  水流カ事変ニ因リ低地ニ於テ阻塞シタルトキハ高地ノ所有者ハ自費ヲ以テ其疏通ニ必要ナル工事ヲ為スコトヲ得  
(水流に関する工作物の修繕等)    
第二百十六条 他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる。 第二百十六条  甲地ニ於テ貯水、排水又ハ引水ノ為メニ設ケタル工作物ノ破潰又ハ阻塞ニ因リテ乙地ニ損害ヲ及ホシ又ハ及ホス虞アルトキハ乙地ノ所有者ハ甲地ノ所有者ヲシテ修繕若クハ疏通ヲ為サシメ又必要アルトキハ予防工事ヲ為サシムルコトヲ得  
(費用の負担についての慣習)    
第二百十七条 第二条の場合において、費用の負担について別段の慣習があるときは、その慣習に従う。 第二百十七条  前二条ノ場合ニ於テ費用ノ負担ニ付キ別段ノ慣習アルトキハ其慣習ニ従フ  
(雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止)    
第二百十八条 土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。 第二百十八条  土地ノ所有者ハ直チニ雨水ヲ隣地ニ注瀉セシムヘキ屋根其他ノ工作物ヲ設クルコトヲ得ス  
(水流の変更)    
第二百十九条 溝、堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、その水路又は幅員を変更してはならない。 第二百十九条  溝渠其他ノ水流地ノ所有者ハ対岸ノ土地カ他人ノ所有ニ属スルトキハ其水路又ハ幅員ヲ変スルコトヲ得ス  
2 両岸の土地が水流地の所有者に属するときは、その所有者は、水路及び幅員を変更することができる。ただし、水流が隣地と交わる地点において、自然の水路に戻さなければならない。 2 両岸ノ土地カ水流地ノ所有者ニ属スルトキハ其所有者ハ水路及ヒ幅員ヲ変スルコトヲ得但下口ニ於テ自然ノ水路ニ復スルコトヲ要ス  
3 前二項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。 3 前二項ノ規定ニ異ナリタル慣習アルトキハ其慣習ニ従フ  
(排水のための低地の通水)    
第二百二十条 高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすため、又は自家用若しくは農工業用の余水を排出するため、公の水流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。この場合においては、低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。 第二百二十条  高地ノ所有者ハ浸水地ヲ乾カス為メ又ハ家用若クハ農工業用ノ余水ヲ排泄スル為メ公路、公流又ハ下水道ニ至ルマテ低地ニ水ヲ通過セシムルコトヲ得但低地ノ為メニ損害最モ少キ場所及ヒ方法ヲ選フコトヲ要ス  
(通水用工作物の使用)    
第二百二十一条 土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。 第二百二十一条  土地ノ所有者ハ其所有地ノ水ヲ通過セシムル為メ高地又ハ低地ノ所有者カ設ケタル工作物ヲ使用スルコトヲ得  
2 前項の場合には、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。 2 前項ノ場合ニ於テ他人ノ工作物ヲ使用スル者ハ其利益ヲ受クル割合ニ応シテ工作物ノ設置及ヒ保存ノ費用ヲ分担スルコトヲ要ス  
(堰の設置及び使用)    
第二百二十二条 水流地の所有者は、堰を設ける必要がある場合には、対岸の土地が他人の所有に属するときであっても、その堰を対岸に付着させて設けることができる。ただし、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければならない。 第二百二十二条  水流地ノ所有者ハ堰ヲ設クル需要アルトキハ其堰ヲ対岸ニ附著セシムルコトヲ得但之ニ因リテ生シタル損害ニ対シテ償金ヲ払フコトヲ要ス  
2 対岸の土地の所有者は、水流地の一部がその所有に属するときは、前項の堰を使用することができる。 2 対岸ノ所有者ハ水流地ノ一部カ其所有ニ属スルトキハ右ノ堰ヲ使用スルコトヲ得但前条ノ規定ニ従ヒ費用ヲ分担スルコトヲ要ス  
3 前条第二項の規定は、前項の場合について準用する。    
(境界標の設置)    
第二百二十三条 土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。 第二百二十三条  土地ノ所有者ハ隣地ノ所有者ト共同ノ費用ヲ以テ疆界ヲ標示スヘキ物ヲ設クルコトヲ得  
(境界標の設置及び保存の費用)    
第二百二十四条 境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。 第二百二十四条  界標ノ設置及ヒ保存ノ費用ハ相隣者平分シテ之ヲ負担ス但測量ノ費用ハ其土地ノ広狭ニ応シテ之ヲ分担ス  
(囲障の設置)    
第二百二十五条 二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。 第二百二十五条  二棟ノ建物カ其所有者ヲ異ニシ且其間ニ空地アルトキハ各所有者ハ他ノ所有者ト共同ノ費用ヲ以テ其疆界ニ囲障ヲ設クルコトヲ得  
2 当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ二メートルのものでなければならない。 2 当事者ノ協議調ハサルトキハ前項ノ囲障ハ板屏又ハ竹垣ニシテ高サ二メートルタルコトヲ要ス  
(囲障の設置及び保存の費用)    
第二百二十六条 前条の囲障の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。 第二百二十六条  囲障ノ設置及ヒ保存ノ費用ハ相隣者平分シテ之ヲ負担ス  
(相隣者の一人による囲障の設置)    
第二百二十七条 相隣者の一人は、第二百二十五条第二項に規定する材料より良好なものを用い、又は同項に規定する高さを増して囲障を設けることができる。ただし、これによって生ずる費用の増加額を負担しなければならない。 第二百二十七条  相隣者ノ一人ハ第二百二十五条第二項ニ定メタル材料ヨリ良好ナルモノヲ用ヰ又ハ高サヲ増シテ囲障ヲ設クルコトヲ得但之ニ因リテ生スル費用ノ増額ヲ負担スルコトヲ要ス  
(囲障の設置等に関する慣習)    
第二百二十八条 前三条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。 第二百二十八条  前三条ノ規定ニ異ナリタル慣習アルトキハ其慣習ニ従フ  
(境界標等の共有の推定)    
第二百二十九条 境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。 第二百二十九条  疆界線上ニ設ケタル界標、囲障、牆壁及ヒ溝渠ハ相隣者ノ共有ニ属スルモノト推定ス  
第二百三十条 一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁については、前条の規定は、適用しない。 第二百三十条  一棟ノ建物ノ部分ヲ成ス疆界線上ノ牆壁ニハ前条ノ規定ヲ適用セス  
2 高さの異なる二棟の隣接する建物を隔てる障壁の高さが、低い建物の高さを超えるときは、その障壁のうち低い建物を超える部分についても、前項と同様とする。ただし、防火障壁については、この限りでない。 2 高サノ不同ナル二棟ノ建物ヲ隔ツル牆壁ノ低キ建物ヲ踰ユル部分亦同シ但防火牆壁ハ此限ニ在ラス  
(共有の障壁の高さを増す工事)    
第二百三十一条 相隣者の一人は、共有の障壁の高さを増すことができる。ただし、その障壁がその工事に耐えないときは、自己の費用で、必要な工作を加え、又はその障壁を改築しなければならない。 第二百三十一条  相隣者ノ一人ハ共有ノ牆壁ノ高サヲ増スコトヲ得但其牆壁カ此工事ニ耐ヘサルトキハ自費ヲ以テ工作ヲ加ヘ又ハ其牆壁ヲ改築スルコトヲ要ス  
2 前項の規定により障壁の高さを増したときは、その高さを増した部分は、その工事をした者の単独の所有に属する。 2 前項ノ規定ニ依リテ牆壁ノ高サヲ増シタル部分ハ其工事ヲ為シタル者ノ専有ニ属ス  
第二百三十二条 前条の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。 第二百三十二条  前条ノ場合ニ於テ隣人カ損害ヲ受ケタルトキハ其償金ヲ請求スルコトヲ得  
(竹木の枝の切除及び根の切取り)    
第二百三十三条 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。 第二百三十三条  隣地ノ竹木ノ枝カ疆界線ヲ踰ユルトキハ其竹木ノ所有者ヲシテ其枝ヲ剪除セシムルコトヲ得  
2 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。 2 隣地ノ竹木ノ根カ疆界線ヲ踰ユルトキハ之ヲ截取スルコトヲ得  
(境界線付近の建築の制限)    
第二百三十四条 建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。 第二百三十四条  建物ヲ築造スルニハ疆界線ヨリ五十センチメートル以上ノ距離ヲ存スルコトヲ要ス  
2 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。 2 前項ノ規定ニ違ヒテ建築ヲ為サントスル者アルトキハ隣地ノ所有者ハ其建築ヲ廃止シ又ハ之ヲ変更セシムルコトヲ得但建築著手ノ時ヨリ一年ヲ経過シ又ハ其建築ノ竣成シタル後ハ損害賠償ノ請求ノミヲ為スコトヲ得  
第二百三十五条 境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。 第二百三十五条  疆界線ヨリ一メートル未満ノ距離ニ於テ他人ノ宅地ヲ観望スヘキ窓又ハ椽側ヲ設クル者ハ目隠ヲ附スルコトヲ要ス  
2 前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。 2 前項ノ距離ハ窓又ハ椽側ノ最モ隣地ニ近キ点ヨリ直角線ニテ疆界線ニ至ルマテヲ測算ス  
(境界線付近の建築に関する慣習)    
第二百三十六条 前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。 第二百三十六条  前二条ノ規定ニ異ナリタル慣習アルトキハ其慣習ニ従フ  
(境界線付近の掘削の制限)    
第二百三十七条 井戸、用水だめ、下水だめ又は肥料だめを掘るには境界線から二メートル以上、池、穴蔵又はし尿だめを掘るには境界線から一メートル以上の距離を保たなければならない。 第二百三十七条  井戸、用水溜、下水溜又ハ肥料溜ヲ穿ツニハ疆界線ヨリ二メートル以上池、地窖又ハ厠坑ヲ穿ツニハ一メートル以上ノ距離ヲ存スルコトヲ要ス  
2 導水管を埋め、又は溝若しくは堀を掘るには、境界線からその深さの二分の一以上の距離を保たなければならない。ただし、一メートルを超えることを要しない。 2 水樋ヲ埋メ又ハ溝渠ヲ穿ツニハ疆界線ヨリ其深サノ半以上ノ距離ヲ存スルコトヲ要ス但一メートルヲ踰ユルコトヲ要セス  
(境界線付近の掘削に関する注意義務)    
第二百三十八条 境界線の付近において前条の工事をするときは、土砂の崩壊又は水若しくは汚液の漏出を防ぐため必要な注意をしなければならない。 第二百三十八条  疆界線ノ近傍ニ於テ前条ノ工事ヲ為ストキハ土砂ノ崩壊又ハ水若クハ汚液ノ滲漏ヲ防クニ必要ナル注意ヲ為スコトヲ要ス  
第二節 所有権の取得 第二節 所有権ノ取得   
(無主物の帰属)    
第二百三十九条 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。 第二百三十九条  無主ノ動産ハ所有ノ意思ヲ以テ之ヲ占有スルニ因リテ其所有権ヲ取得ス  
2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。 2 無主ノ不動産ハ国庫ノ所有ニ属ス  
(遺失物の拾得)    
第二百四十条 遺失物は、遺失物法(明治三十二年法律第八十七号)の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。 第二百四十条  遺失物ハ特別法ノ定ムル所ニ従ヒ公告ヲ為シタル後六个月内ニ其所有者ノ知レサルトキハ拾得者其所有権ヲ取得ス  
(埋蔵物の発見)    
第二百四十一条 埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。 第二百四十一条  埋蔵物ハ特別法ノ定ムル所ニ従ヒ公告ヲ為シタル後六个月内ニ其所有者ノ知レサルトキハ発見者其所有権ヲ取得ス但他人ノ物ノ中ニ於テ発見シタル埋蔵物ハ発見者及ヒ其物ノ所有者折半シテ其所有権ヲ取得ス  
(不動産の付合)    
第二百四十二条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。 第二百四十二条  不動産ノ所有者ハ其不動産ノ従トシテ之ニ附合シタル物ノ所有権ヲ取得ス但権原ニ因リテ其物ヲ附属セシメタル他人ノ権利ヲ妨ケス  
(動産の付合)    
第二百四十三条 所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。 第二百四十三条  各別ノ所有者ニ属スル数個ノ動産カ附合ニ因リ毀損スルニ非サレハ之ヲ分離スルコト能ハサルニ至リタルトキハ其合成物ノ所有権ハ主タル動産ノ所有者ニ属ス分離ノ為メ過分ノ費用ヲ要スルトキ亦同シ  
第二百四十四条 付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。 第二百四十四条  附合シタル動産ニ付キ主従ノ区別ヲ為スコト能ハサルトキハ各動産ノ所有者ハ其附合ノ当時ニ於ケル価格ノ割合ニ応シテ合成物ヲ共有ス  
(混和)    
第二百四十五条 前二条の規定は、所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合について準用する。 第二百四十五条  前二条ノ規定ハ各別ノ所有者ニ属スル物カ混和シテ識別スルコト能ハサルニ至リタル場合ニ之ヲ準用ス  
(加工)    
第二百四十六条 他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。 第二百四十六条  他人ノ動産ニ工作ヲ加ヘタル者アルトキハ其加工物ノ所有権ハ材料ノ所有者ニ属ス但工作ニ因リテ生シタル価格カ著シク材料ノ価格ニ超ユルトキハ加工者其物ノ所有権ヲ取得ス  
2 前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。 2 加工者カ材料ノ一部ヲ供シタルトキハ其価格ニ工作ニ因リテ生シタル価格ヲ加ヘタルモノカ他人ノ材料ノ価格ニ超ユルトキニ限リ加工者其物ノ所有権ヲ取得ス  
(付合、混和又は加工の効果)    
第二百四十七条 第二百四十二条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も、消滅する。 第二百四十七条  前五条ノ規定ニ依リテ物ノ所有権カ消滅シタルトキハ其物ノ上ニ存セル他ノ権利モ亦消滅ス  
2 前項に規定する場合において、物の所有者が、合成物、混和物又は加工物(以下この項において「合成物等」という。)の単独所有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その合成物等について存し、物の所有者が合成物等の共有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その持分について存する。 2 右ノ物ノ所有者カ合成物、混和物又ハ加工物ノ単独所有者ト為リタルトキハ前項ノ権利ハ爾後合成物、混和物又ハ加工物ノ上ニ存シ其共有者ト為リタルトキハ其持分ノ上ニ存ス  
(付合、混和又は加工に伴う償金の請求)    
第二百四十八条 第二百四十二条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は、第七百三条及び第七百四条の規定に従い、その償金を請求することができる。 第二百四十八条  前六条ノ規定ノ適用ニ因リテ損失ヲ受ケタル者ハ第七百三条及ヒ第七百四条ノ規定ニ従ヒ償金ヲ請求スルコトヲ得  
第三節 共有 第三節 共有   
(共有物の使用)    
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。 第二百四十九条  各共有者ハ共有物ノ全部ニ付キ其持分ニ応シタル使用ヲ為スコトヲ得  
(共有持分の割合の推定)    
第二百五十条 各共有者の持分は、相等しいものと推定する。 第二百五十条  各共有者ノ持分ハ相均シキモノト推定ス  
(共有物の変更)    
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。 第二百五十一条  各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非サレハ共有物ニ変更ヲ加フルコトヲ得ス  
(共有物の管理)    
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。 第二百五十二条  共有物ノ管理ニ関スル事項ハ前条ノ場合ヲ除ク外各共有者ノ持分ノ価格ニ従ヒ其過半数ヲ以テ之ヲ決ス但保存行為ハ各共有者之ヲ為スコトヲ得  
(共有物に関する負担)    
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。 第二百五十三条  各共有者ハ其持分ニ応シ管理ノ費用ヲ払ヒ其他共有物ノ負担ニ任ス  
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。 2 共有者カ一年内ニ前項ノ義務ヲ履行セサルトキハ他ノ共有者ハ相当ノ償金ヲ払ヒテ其者ノ持分ヲ取得スルコトヲ得  
(共有物についての債権)    
第二百五十四条 共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。 第二百五十四条  共有者ノ一人カ共有物ニ付キ他ノ共有者ニ対シテ有スル債権ハ其特定承継人ニ対シテモ之ヲ行フコトヲ得  
(持分の放棄及び共有者の死亡)    
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。 第二百五十五条  共有者ノ一人カ其持分ヲ抛棄シタルトキ又ハ相続人ナクシテ死亡シタルトキハ其持分ハ他ノ共有者ニ帰属ス  
(共有物の分割請求)    
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。 第二百五十六条  各共有者ハ何時ニテモ共有物ノ分割ヲ請求スルコトヲ得但五年ヲ超エサル期間内分割ヲ為ササル契約ヲ為スコトヲ妨ケス  
2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。 2 此契約ハ之ヲ更新スルコトヲ得但其期間ハ更新ノ時ヨリ五年ヲ超ユルコトヲ得ス  
第二百五十七条 前条の規定は、第二百二十九条に規定する共有物については、適用しない。 第二百五十七条  前条ノ規定ハ第二百二十九条ニ掲ケタル共有物ニハ之ヲ適用セス  
(裁判による共有物の分割)    
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。 第二百五十八条  分割ハ共有者ノ協議調ハサルトキハ之ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得  
2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。 2 前項ノ場合ニ於テ現物ヲ以テ分割ヲ為スコト能ハサルトキ又ハ分割ニ因リテ著シク其価格ヲ損スル虞アルトキハ裁判所ハ其競売ヲ命スルコトヲ得  
(共有に関する債権の弁済)    
第二百五十九条 共有者の一人が他の共有者に対して共有に関する債権を有するときは、分割に際し、債務者に帰属すべき共有物の部分をもって、その弁済に充てることができる。 第二百五十九条  共有者ノ一人カ他ノ共有者ニ対シテ共有ニ関スル債権ヲ有スルトキハ分割ニ際シ債務者ニ帰スヘキ共有物ノ部分ヲ以テ其弁済ヲ為サシムルコトヲ得  
2 債権者は、前項の弁済を受けるため債務者に帰属すべき共有物の部分を売却する必要があるときは、その売却を請求することができる。 2 債権者ハ右ノ弁済ヲ受クル為メ債務者ニ帰スヘキ共有物ノ部分ヲ売却スル必要アルトキハ其売却ヲ請求スルコトヲ得  
(共有物の分割への参加)    
第二百六十条 共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。 第二百六十条  共有物ニ付キ権利ヲ有スル者及ヒ各共有者ノ債権者ハ自己ノ費用ヲ以テ分割ニ参加スルコトヲ得  
2 前項の規定による参加の請求があったにもかかわらず、その請求をした者を参加させないで分割をしたときは、その分割は、その請求をした者に対抗することができない。 2 前項ノ規定ニ依リテ参加ノ請求アリタルニ拘ハラス其参加ヲ待タスシテ分割ヲ為シタルトキハ其分割ハ之ヲ以テ参加ヲ請求シタル者ニ対抗スルコトヲ得ス  
(分割における共有者の担保責任)    
第二百六十一条 各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。 第二百六十一条  各共有者ハ他ノ共有者カ分割ニ因リテ得タル物ニ付キ売主ト同シク其持分ニ応シテ担保ノ責ニ任ス  
(共有物に関する証書)    
第二百六十二条 分割が完了したときは、各分割者は、その取得した物に関する証書を保存しなければならない。 第二百六十二条  分割カ結了シタルトキハ各分割者ハ其受ケタル物ニ関スル証書ヲ保存スルコトヲ要ス  
2 共有者の全員又はそのうちの数人に分割した物に関する証書は、その物の最大の部分を取得した者が保存しなければならない。 2 共有者一同又ハ其中ノ数人ニ分割シタル物ニ関スル証書ハ其物ノ最大部分ヲ受ケタル者之ヲ保存スルコトヲ要ス  
3 前項の場合において、最大の部分を取得した者がないときは、分割者間の協議で証書の保存者を定める。協議が調わないときは、裁判所が、これを指定する。 3 前項ノ場合ニ於テ最大部分ヲ受ケタル者ナキトキハ分割者ノ協議ヲ以テ証書ノ保存者ヲ定ム若シ協議調ハサルトキハ裁判所之ヲ指定ス  
4 証書の保存者は、他の分割者の請求に応じて、その証書を使用させなければならない。 4 証書ノ保存者ハ他ノ分割者ノ請求ニ応シテ其証書ヲ使用セシムルコトヲ要ス  
(共有の性質を有する入会権)    
第二百六十三条 共有の性質を有する入会権については、各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する。 第二百六十三条  共有ノ性質ヲ有スル入会権ニ付テハ各地方ノ慣習ニ従フ外本節ノ規定ヲ適用ス  
(準共有)    
第二百六十四条 この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。 第二百六十四条  本節ノ規定ハ数人ニテ所有権以外ノ財産権ヲ有スル場合ニ之ヲ準用ス但法令ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス  
第四章 地上権 第四章 地上権   
(地上権の内容)    
第二百六十五条 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。 第二百六十五条  地上権者ハ他人ノ土地ニ於テ工作物又ハ竹木ヲ所有スル為メ其土地ヲ使用スル権利ヲ有ス  
(地代)    
第二百六十六条 第二百七十四条から第二百七十六条までの規定は、地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する。 第二百六十六条  地上権者カ土地ノ所有者ニ定期ノ地代ヲ払フヘキトキハ第二百七十四条乃至第二百七十六条ノ規定ヲ準用ス  
2 地代については、前項に規定するもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。 2 此他地代ニ付テハ賃貸借ニ関スル規定ヲ準用ス  
(相隣関係の規定の準用)    
第二百六十七条 前章第一節第二款(相隣関係)の規定は、地上権者間又は地上権者と土地の所有者との間について準用する。ただし、第二百二十九条の規定は、境界線上の工作物が地上権の設定後に設けられた場合に限り、地上権者について準用する。 第二百六十七条  第二百九条乃至第二百三十八条ノ規定ハ地上権者間又ハ地上権者ト土地ノ所有者トノ間ニ之ヲ準用ス但第二百二十九条ノ推定ハ地上権設定後ニ為シタル工事ニ付テノミ之ヲ地上権者ニ準用ス  
(地上権の存続期間)    
第二百六十八条 設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において、別段の慣習がないときは、地上権者は、いつでもその権利を放棄することができる。ただし、地代を支払うべきときは、一年前に予告をし、又は期限の到来していない一年分の地代を支払わなければならない。 第二百六十八条  設定行為ヲ以テ地上権ノ存続期間ヲ定メサリシ場合ニ於テ別段ノ慣習ナキトキハ地上権者ハ何時ニテモ其権利ヲ抛棄スルコトヲ得但地代ヲ払フヘキトキハ一年前ニ予告ヲ為シ又ハ未タ期限ノ至ラサル一年分ノ地代ヲ払フコトヲ要ス  
2 地上権者が前項の規定によりその権利を放棄しないときは、裁判所は、当事者の請求により、二十年以上五十年以下の範囲内において、工作物又は竹木の種類及び状況その他地上権の設定当時の事情を考慮して、その存続期間を定める。 2 地上権者カ前項ノ規定ニ依リテ其権利ヲ抛棄セサルトキハ裁判所ハ当事者ノ請求ニ因リ二十年以上五十年以下ノ範囲内ニ於テ工作物又ハ竹木ノ種類及ヒ状況其他地上権設定ノ当時ノ事情ヲ斟酌シテ其存続期間ヲ定ム  
(工作物等の収去等)    
第二百六十九条 地上権者は、その権利が消滅した時に、土地を原状に復してその工作物及び竹木を収去することができる。ただし、土地の所有者が時価相当額を提供してこれを買い取る旨を通知したときは、地上権者は、正当な理由がなければ、これを拒むことができない。 第二百六十九条  地上権者ハ其権利消滅ノ時土地ヲ原状ニ復シテ其工作物及ヒ竹木ヲ収去スルコトヲ得但土地ノ所有者カ時価ヲ提供シテ之ヲ買取ルヘキ旨ヲ通知シタルトキハ地上権者ハ正当ノ理由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス  
2 前項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。 2 前項ノ規定ニ異ナリタル慣習アルトキハ其慣習ニ従フ  
(地下又は空間を目的とする地上権)    
第二百六十九条の二 地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。 第二百六十九条ノ二  地下又ハ空間ハ上下ノ範囲ヲ定メ工作物ヲ所有スル為メ之ヲ地上権ノ目的ト為スコトヲ得此場合ニ於テハ設定行為ヲ以テ地上権ノ行使ノ為メニ土地ノ使用ニ制限ヲ加フルコトヲ得  
2 前項の地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地の使用又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げることができない。 2 前項ノ地上権ハ第三者ガ土地ノ使用又ハ収益ヲ為ス権利ヲ有スル場合ニ於テモ其権利又ハ之ヲ目的トスル権利ヲ有スル総テノ者ノ承諾アルトキハ之ヲ設定スルコトヲ得此場合ニ於テハ土地ノ使用又ハ収益ヲ為ス権利ヲ有スル者ハ其地上権ノ行使ヲ妨グルコトヲ得ズ  
第五章 永小作権 第五章 永小作権   
(永小作権の内容)    
第二百七十条 永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。 第二百七十条  永小作人ハ小作料ヲ払ヒテ他人ノ土地ニ耕作又ハ牧畜ヲ為ス権利ヲ有ス  
(永小作人による土地の変更の制限)    
第二百七十一条 永小作人は、土地に対して、回復することのできない損害を生ずべき変更を加えることができない。 第二百七十一条  永小作人ハ土地ニ永久ノ損害ヲ生スヘキ変更ヲ加フルコトヲ得ス  
(永小作権の譲渡又は土地の賃貸)    
第二百七十二条 永小作人は、その権利を他人に譲り渡し、又はその権利の存続期間内において耕作若しくは牧畜のため土地を賃貸することができる。ただし、設定行為で禁じたときは、この限りでない。 第二百七十二条  永小作人ハ其権利ヲ他人ニ譲渡シ又ハ其権利ノ存続期間内ニ於テ耕作若クハ牧畜ノ為メ土地ヲ賃貸スルコトヲ得但設定行為ヲ以テ之ヲ禁シタルトキハ此限ニ在ラス  
(賃貸借に関する規定の準用)    
第二百七十三条 永小作人の義務については、この章の規定及び設定行為で定めるもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。 第二百七十三条  永小作人ノ義務ニ付テハ本章ノ規定及ヒ設定行為ヲ以テ定メタルモノノ外賃貸借ニ関スル規定ヲ準用ス  
(小作料の減免)    
第二百七十四条 永小作人は、不可抗力により収益について損失を受けたときであっても、小作料の免除又は減額を請求することができない。 第二百七十四条  永小作人ハ不可抗力ニ因リ収益ニ付キ損失ヲ受ケタルトキト雖モ小作料ノ免除又ハ減額ヲ請求スルコトヲ得ス  
(永小作権の放棄)    
第二百七十五条 永小作人は、不可抗力によって、引き続き三年以上全く収益を得ず、又は五年以上小作料より少ない収益を得たときは、その権利を放棄することができる。 第二百七十五条  永小作人カ不可抗力ニ因リ引続キ三年以上全ク収益ヲ得ス又ハ五年以上小作料ヨリ少キ収益ヲ得タルトキハ其権利ヲ抛棄スルコトヲ得  
(永小作権の消滅請求)    
第二百七十六条 永小作人が引き続き二年以上小作料の支払を怠ったときは、土地の所有者は、永小作権の消滅を請求することができる。 第二百七十六条  永小作人カ引続キ二年以上小作料ノ支払ヲ怠リ又ハ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ地主ハ永小作権ノ消滅ヲ請求スルコトヲ得  
(永小作権に関する慣習)    
第二百七十七条 第二百七十一条から前条までの規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。 第二百七十七条  前六条ノ規定ニ異ナリタル慣習アルトキハ其慣習ニ従フ  
(永小作権の存続期間)    
第二百七十八条 永小作権の存続期間は、二十年以上五十年以下とする。設定行為で五十年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。 第二百七十八条  永小作権ノ存続期間ハ二十年以上五十年以下トス若シ五十年ヨリ長キ期間ヲ以テ永小作権ヲ設定シタルトキハ其期間ハ之ヲ五十年ニ短縮ス  
2 永小作権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から五十年を超えることができない。 2 永小作権ノ設定ハ之ヲ更新スルコトヲ得但其期間ハ更新ノ時ヨリ五十年ヲ超ユルコトヲ得ス  
3 設定行為で永小作権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、別段の慣習がある場合を除き、三十年とする。 3 設定行為ヲ以テ永小作権ノ存続期間ヲ定メサリシトキハ其期間ハ別段ノ慣習アル場合ヲ除ク外之ヲ三十年トス  
(工作物等の収去等)    
第二百七十九条 第二百六十九条の規定は、永小作権について準用する。 第二百七十九条  第二百六十九条ノ規定ハ永小作権ニ之ヲ準用ス  
第六章 地役権 第六章 地役権   
(地役権の内容)    
第二百八十条 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。 第二百八十条  地役権者ハ設定行為ヲ以テ定メタル目的ニ従ヒ他人ノ土地ヲ自己ノ土地ノ便益ニ供スル権利ヲ有ス但第三章第一節中ノ公ノ秩序ニ関スル規定ニ違反セサルコトヲ要ス  
(地役権の付従性)    
第二百八十一条 地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。 第二百八十一条  地役権ハ要役地ノ所有権ノ従トシテ之ト共ニ移転シ又ハ要役地ノ上ニ存スル他ノ権利ノ目的タルモノトス但設定行為ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス  
2 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。 2 地役権ハ要役地ヨリ分離シテ之ヲ譲渡シ又ハ他ノ権利ノ目的ト為スコトヲ得ス  
(地役権の不可分性)    
第二百八十二条 土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない。 第二百八十二条  土地ノ共有者ノ一人ハ其持分ニ付キ其土地ノ為メニ又ハ其土地ノ上ニ存スル地役権ヲ消滅セシムルコトヲ得ス  
2 土地の分割又はその一部の譲渡の場合には、地役権は、その各部のために又はその各部について存する。ただし、地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは、この限りでない。 2 土地ノ分割又ハ其一部ノ譲渡ノ場合ニ於テハ地役権ハ其各部ノ為メニ又ハ其各部ノ上ニ存ス但地役権カ其性質ニ因リ土地ノ一部ノミニ関スルトキハ此限ニ在ラス  
(地役権の時効取得)    
第二百八十三条 地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。 第二百八十三条  地役権ハ継続且表現ノモノニ限リ時効ニ因リテ之ヲ取得スルコトヲ得  
第二百八十四条 土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。 第二百八十四条  共有者ノ一人カ時効ニ因リテ地役権ヲ取得シタルトキハ他ノ共有者モ亦之ヲ取得ス  
2 共有者に対する時効の中断は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない。 2 共有者ニ対スル時効中断ハ地役権ヲ行使スル各共有者ニ対シテ之ヲ為スニ非サレハ其効力ヲ生セス  
3 地役権を行使する共有者が数人ある場合には、その一人について時効の停止の原因があっても、時効は、各共有者のために進行する。 3 地役権ヲ行使スル共有者数人アル場合ニ於テ其一人ニ対シテ時効停止ノ原因アルモ時効ハ各共有者ノ為メニ進行ス  
(用水地役権)    
第二百八十五条 用水地役権の承役地(地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるものをいう。以下同じ。)において、水が要役地及び承役地の需要に比して不足するときは、その各土地の需要に応じて、まずこれを生活用に供し、その残余を他の用途に供するものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。 第二百八十五条  用水地役権ノ承役地ニ於テ水カ要役地及ヒ承役地ノ需要ノ為メニ不足ナルトキハ其各地ノ需要ニ応シ先ツ之ヲ家用ニ供シ其残余ヲ他ノ用ニ供スルモノトス但設定行為ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス  
2 同一の承役地について数個の用水地役権を設定したときは、後の地役権者は、前の地役権者の水の使用を妨げてはならない。 2 同一ノ承役地ノ上ニ数個ノ用水地役権ヲ設定シタルトキハ後ノ地役権者ハ前ノ地役権者ノ水ノ使用ヲ妨クルコトヲ得ス  
(承役地の所有者の工作物の設置義務等)    
第二百八十六条 設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。 第二百八十六条  設定行為又ハ特別契約ニ因リ承役地ノ所有者カ其費用ヲ以テ地役権ノ行使ノ為メニ工作物ヲ設ケ又ハ其修繕ヲ為ス義務ヲ負担シタルトキハ其義務ハ承役地ノ所有者ノ特定承継人モ亦之ヲ負担ス  
第二百八十七条 承役地の所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、これにより前条の義務を免れることができる。 第二百八十七条  承役地ノ所有者ハ何時ニテモ地役権ニ必要ナル土地ノ部分ノ所有権ヲ地役権者ニ委棄シテ前条ノ負担ヲ免ルルコトヲ得  
(承役地の所有者の工作物の使用)    
第二百八十八条 承役地の所有者は、地役権の行使を妨げない範囲内において、その行使のために承役地の上に設けられた工作物を使用することができる。 第二百八十八条  承役地ノ所有者ハ地役権ノ行使ヲ妨ケサル範囲内ニ於テ其行使ノ為メニ承役地ノ上ニ設ケタル工作物ヲ使用スルコトヲ得  
2 前項の場合には、承役地の所有者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。 2 前項ノ場合ニ於テハ承役地ノ所有者ハ其利益ヲ受クル割合ニ応シテ工作物ノ設置及ヒ保存ノ費用ヲ分担スルコトヲ要ス  
(承役地の時効取得による地役権の消滅)    
第二百八十九条 承役地の占有者が取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、地役権は、これによって消滅する。 第二百八十九条  承役地ノ占有者カ取得時効ニ必要ナル条件ヲ具備セル占有ヲ為シタルトキハ地役権ハ之ニ因リテ消滅ス  
第二百九十条 前条の規定による地役権の消滅時効は、地役権者がその権利を行使することによって中断する。 第二百九十条  前条ノ消滅時効ハ地役権者カ其権利ヲ行使スルニ因リテ中断ス  
(地役権の消滅時効)    
第二百九十一条 第百六十七条第二項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。 第二百九十一条  第百六十七条第二項ニ規定セル消滅時効ノ期間ハ不継続地役権ニ付テハ最後ノ行使ノ時ヨリ之ヲ起算シ継続地役権ニ付テハ其行使ヲ妨クヘキ事実ノ生シタル時ヨリ之ヲ起算ス  
第二百九十二条 要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の中断又は停止があるときは、その中断又は停止は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる。 第二百九十二条  要役地カ数人ノ共有ニ属スル場合ニ於テ其一人ノ為メニ時効ノ中断又ハ停止アルトキハ其中断又ハ停止ハ他ノ共有者ノ為メニモ其効力ヲ生ス  
第二百九十三条 地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅する。 第二百九十三条  地役権者カ其権利ノ一部ヲ行使セサルトキハ其部分ノミ時効ニ因リテ消滅ス  
(共有の性質を有しない入会権)    
第二百九十四条 共有の性質を有しない入会権については、各地方の慣習に従うほか、この章の規定を準用する。 第二百九十四条  共有ノ性質ヲ有セサル入会権ニ付テハ各地方ノ慣習ニ従フ外本章ノ規定ヲ準用ス  
第七章 留置権 第七章 留置権   
(留置権の内容)    
第二百九十五条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。 第二百九十五条  他人ノ物ノ占有者カ其物ニ関シテ生シタル債権ヲ有スルトキハ其債権ノ弁済ヲ受クルマテ其物ヲ留置スルコトヲ得但其債権カ弁済期ニ在ラサルトキハ此限ニ在ラス  
2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。 2 前項ノ規定ハ占有カ不法行為ニ因リテ始マリタル場合ニハ之ヲ適用セス  
(留置権の不可分性)    
第二百九十六条 留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。 第二百九十六条  留置権者ハ債権ノ全部ノ弁済ヲ受クルマテハ留置物ノ全部ニ付キ其権利ヲ行フコトヲ得  
(留置権者による果実の収取)    
第二百九十七条 留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる。 第二百九十七条  留置権者ハ留置物ヨリ生スル果実ヲ収取シ他ノ債権者ニ先チテ之ヲ其債権ノ弁済ニ充当スルコトヲ得  
2 前項の果実は、まず債権の利息に充当し、なお残余があるときは元本に充当しなければならない。 2 前項ノ果実ハ先ツ之ヲ債権ノ利息ニ充当シ尚ホ余剰アルトキハ之ヲ元本ニ充当スルコトヲ要ス  
(留置権者による留置物の保管等)    
第二百九十八条 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。 第二百九十八条  留置権者ハ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ留置物ヲ占有スルコトヲ要ス  
2 留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。 2 留置権者ハ債務者ノ承諾ナクシテ留置物ノ使用若クハ賃貸ヲ為シ又ハ之ヲ担保ニ供スルコトヲ得ス但其物ノ保存ニ必要ナル使用ヲ為スハ此限ニ在ラス  
3 留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。 3 留置権者カ前二項ノ規定ニ違反シタルトキハ債務者ハ留置権ノ消滅ヲ請求スルコトヲ得  
(留置権者による費用の償還請求)    
第二百九十九条 留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。 第二百九十九条  留置権者カ留置物ニ付キ必要費ヲ出タシタルトキハ所有者ヲシテ其償還ヲ為サシムルコトヲ得  
2 留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。 2 留置権者カ留置物ニ付キ有益費ヲ出タシタルトキハ其価格ノ増加カ現存スル場合ニ限リ所有者ノ選択ニ従ヒ其費シタル金額又ハ増価額ヲ償還セシムルコトヲ得但裁判所ハ所有者ノ請求ニ因リ之ニ相当ノ期限ヲ許与スルコトヲ得  
(留置権の行使と債権の消滅時効)    
第三百条 留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。 第三百条  留置権ノ行使ハ債権ノ消滅時効ノ進行ヲ妨ケス  
(担保の供与による留置権の消滅)    
第三百一条 債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。 第三百一条  債務者ハ相当ノ担保ヲ供シテ留置権ノ消滅ヲ請求スルコトヲ得  
(占有の喪失による留置権の消滅)    
第三百二条 留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。ただし、第二百九十八条第二項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。 第三百二条  留置権ハ占有ノ喪失ニ因リテ消滅ス但第二百九十八条第二項ノ規定ニ依リ賃貸又ハ質入ヲ為シタル場合ハ此限ニ在ラス  
第八章 先取特権 第八章 先取特権   
第一節 総則 第一節 総則   
(先取特権の内容)    
第三百三条 先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 第三百三条  先取特権者ハ本法其他ノ法律ノ規定ニ従ヒ其債務者ノ財産ニ付キ他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス  
(物上代位)    
第三百四条 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。 第三百四条  先取特権ハ其目的物ノ売却、賃貸、滅失又ハ毀損ニ因リテ債務者カ受クヘキ金銭其他ノ物ニ対シテモ之ヲ行フコトヲ得但先取特権者ハ其払渡又ハ引渡前ニ差押ヲ為スコトヲ要ス  
2 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。 2 債務者カ先取特権ノ目的物ノ上ニ設定シタル物権ノ対価ニ付キ亦同シ  
(先取特権の不可分性)    
第三百五条 第二百九十六条の規定は、先取特権について準用する。 第三百五条  第二百九十六条ノ規定ハ先取特権ニ之ヲ準用ス  
第二節 先取特権の種類 第二節 先取特権ノ種類   
第一款 一般の先取特権 第一款 一般ノ先取特権   
(一般の先取特権)    
第三百六条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。 第三百六条  左ニ掲ケタル原因ヨリ生シタル債権ヲ有スル者ハ債務者ノ総財産ノ上ニ先取特権ヲ有ス  
一 共益の費用 一  共益ノ費用  
二 雇用関係 二  雇人ノ給料  
三 葬式の費用 三  葬式ノ費用  
四 日用品の供給 四  日用品ノ供給  
(共益費用の先取特権)    
第三百七条 共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用について存在する。 第三百七条  共益費用ノ先取特権ハ各債権者ノ共同利益ノ為メニ為シタル債務者ノ財産ノ保存、清算又ハ配当ニ関スル費用ニ付キ存在ス  
2 前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。 2 前項ノ費用中総債権者ニ有益ナラサリシモノニ付テハ先取特権ハ其費用ノ為メ利益ヲ受ケタル債権者ニ対シテノミ存在ス  
(雇用関係の先取特権)    
第三百八条 雇用関係の先取特権は、給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。 第三百八条  雇人給料ノ先取特権ハ債務者ノ雇人カ受クヘキ最後ノ六个月間ノ給料ニ付キ存在ス  
(葬式費用の先取特権)    
第三百九条 葬式の費用の先取特権は、債務者のためにされた葬式の費用のうち相当な額について存在する。 第三百九条  葬式費用ノ先取特権ハ債務者ノ身分ニ応シテ為シタル葬式ノ費用ニ付キ存在ス  
2 前項の先取特権は、債務者がその扶養すべき親族のためにした葬式の費用のうち相当な額についても存在する。 2 前項ノ先取特権ハ債務者カ其扶養スヘキ親族ノ身分ニ応シテ為シタル葬式ノ費用ニ付テモ亦存在ス  
(日用品供給の先取特権)    
第三百十条 日用品の供給の先取特権は、債務者又はその扶養すべき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の六箇月間の飲食料品、燃料及び電気の供給について存在する。 第三百十条  日用品供給ノ先取特権ハ債務者又ハ其扶養スヘキ同居ノ親族及ヒ其僕婢ノ生活ニ必要ナル最後ノ六个月間ノ飲食品及ヒ薪炭油ノ供給ニ付キ存在ス  
第二款 動産の先取特権 第二款 動産ノ先取特権   
(動産の先取特権}    
第三百十一条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。 第三百十一条  左ニ掲ケタル原因ヨリ生シタル債権ヲ有スル者ハ債務者ノ特定動産ノ上ニ先取特権ヲ有ス  
一 不動産の賃貸借 一  不動産ノ賃貸借  
二 旅館の宿泊 二  旅店ノ宿泊  
三 旅客又は荷物の運輸 三  旅客又ハ荷物ノ運輸  
四 動産の保存 四  公吏ノ職務上ノ過失  
五 動産の売買 五  動産ノ保存  
六 種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給 六  動産ノ売買  
七 農業の労務 七  種苗又ハ肥料ノ供給  
八 工業の労務 八  農工業ノ労役  
(不動産賃貸の先取特権)    
第三百十二条 不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。 第三百十二条  不動産賃貸ノ先取特権ハ其不動産ノ借賃其他賃貸借関係ヨリ生シタル賃借人ノ債務ニ付キ賃借人ノ動産ノ上ニ存在ス  
(不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲)    
第三百十三条 土地の賃貸人の先取特権は、その土地又はその利用のための建物に備え付けられた動産、その土地の利用に供された動産及び賃借人が占有するその土地の果実について存在する。 第三百十三条  土地ノ賃貸人ノ先取特権ハ賃借地又ハ其利用ノ為メニスル建物ニ備附ケタル動産、其土地ノ利用ニ供シタル動産及ヒ賃借人ノ占有ニ在ル其土地ノ果実ノ上ニ存在ス  
2 建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。 2 建物ノ賃貸人ノ先取特権ハ賃借人カ其建物ニ備附ケタル動産ノ上ニ存在ス  
第三百十四条 賃借権の譲渡又は転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人又は転借人の動産にも及ぶ。譲渡人又は転貸人が受けるべき金銭についても、同様とする。 第三百十四条  賃借権ノ譲渡又ハ転貸ノ場合ニ於テハ賃貸人ノ先取特権ハ譲受人又ハ転借人ノ動産ニ及フ譲渡人又ハ転貸人カ受クヘキ金額ニ付キ亦同シ  
(不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲)    
第三百十五条 賃借人の財産のすべてを清算する場合には、賃貸人の先取特権は、前期、当期及び次期の賃料その他の債務並びに前期及び当期に生じた損害の賠償債務についてのみ存在する。 第三百十五条  賃借人ノ財産ノ総清算ノ場合ニ於テハ賃貸人ノ先取特権ハ前期、当期及ヒ次期ノ借賃其他ノ債務及ヒ前期並ニ当期ニ於テ生シタル損害ノ賠償ニ付テノミ存在ス  
第三百十六条 賃貸人は、敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。 第三百十六条  賃貸人カ敷金ヲ受取リタル場合ニ於テハ其敷金ヲ以テ弁済ヲ受ケサル債権ノ部分ニ付テノミ先取特権ヲ有ス  
(旅館宿泊の先取特権)    
第三百十七条 旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する。 第三百十七条  旅店宿泊ノ先取特権ハ旅客、其従者及ヒ牛馬ノ宿泊料並ニ飲食料ニ付キ其旅店ニ存スル手荷物ノ上ニ存在ス  
(運輸の先取特権)    
第三百十八条 運輸の先取特権は、旅客又は荷物の運送賃及び付随の費用に関し、運送人の占有する荷物について存在する。 第三百十八条  運輸ノ先取特権ハ旅客又ハ荷物ノ運送賃及ヒ附随ノ費用ニ付キ運送人ノ手ニ存スル荷物ノ上ニ存在ス  
(即時取得の規定の準用)    
第三百十九条 第百九十二条から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。 第三百十九条  第百九十二条乃至第百九十五条ノ規定ハ前七条ノ先取特権ニ之ヲ準用ス  
(動産保存の先取特権)    
第三百二十条 動産の保存の先取特権は、動産の保存のために要した費用又は動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その動産について存在する。 第三百二十条  公吏保証金ノ先取特権ハ保証金ヲ供シタル公吏ノ職務上ノ過失ニ因リテ生シタル債権ニ付キ其保証金ノ上ニ存在ス  
(動産売買の先取特権)    
第三百二十一条 動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。 第三百二十一条  動産保存ノ先取特権ハ動産ノ保存費ニ付キ其動産ノ上ニ存在ス  
  2 前項ノ先取特権ハ動産ニ関スル権利ヲ保存、追認又ハ実行セシムル為メニ要シタル費用ニ付テモ亦存在ス  
  第三百二十二条  動産売買ノ先取特権ハ動産ノ代価及ヒ其利息ニ付キ其動産ノ上ニ存在ス  
(種苗又は肥料の供給の先取特権)    
第三百二十二条 種苗又は肥料の供給の先取特権は、種苗又は肥料の代価及びその利息に関し、その種苗又は肥料を用いた後一年以内にこれを用いた土地から生じた果実(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉の使用によって生じた物を含む。)について存在する。 第三百二十三条  種苗肥料供給ノ先取特権ハ種苗又ハ肥料ノ代価及ヒ其利息ニ付キ其種苗又ハ肥料ヲ用ヰタル後一年内ニ之ヲ用ヰタル土地ヨリ生シタル果実ノ上ニ存在ス  
  2 前項ノ先取特権ハ蚕種又ハ蚕ノ飼養ニ供シタル桑葉ノ供給ニ付キ其蚕種又ハ桑葉ヨリ生シタル物ノ上ニモ亦存在ス  
(農業労務の先取特権)    
第三百二十三条 農業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の一年間の賃金に関し、その労務によって生じた果実について存在する。 第三百二十四条  農工業労役ノ先取特権ハ農業ノ労役者ニ付テハ最後ノ一年間工業ノ労役者ニ付テハ最後ノ三个月間ノ賃金ニ付キ其労役ニ因リテ生シタル果実又ハ製作物ノ上ニ存在ス  
(工業労務の先取特権)    
第三百二十四条 工業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の三箇月間の賃金に関し、その労務によって生じた製作物について存在する。    
第三款 不動産の先取特権 第三款 不動産ノ先取特権   
(不動産の先取特権)    
第三百二十五条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。 第三百二十五条  左ニ掲ケタル原因ヨリ生シタル債権ヲ有スル者ハ債務者ノ特定不動産ノ上ニ先取特権ヲ有ス  
一 不動産の保存 一  不動産ノ保存  
二 不動産の工事 二  不動産ノ工事  
三 不動産の売買 三  不動産ノ売買  
(不動産保存の先取特権)    
第三百二十六条 不動産の保存の先取特権は、不動産の保存のために要した費用又は不動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その不動産について存在する。 第三百二十六条  不動産保存ノ先取特権ハ不動産ノ保存費ニ付キ其不動産ノ上ニ存在ス  
  2 第三百二十一条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス  
(不動産工事の先取特権)    
第三百二十七条 不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。 第三百二十七条  不動産工事ノ先取特権ハ工匠、技師及ヒ請負人カ債務者ノ不動産ニ関シテ為シタル工事ノ費用ニ付キ其不動産ノ上ニ存在ス  
2 前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。 2 前項ノ先取特権ハ工事ニ因リテ生シタル不動産ノ増価カ現存スル場合ニ限リ其増価額ニ付テノミ存在ス  
(不動産売買の先取特権)    
第三百二十八条 不動産の売買の先取特権は、不動産の代価及びその利息に関し、その不動産について存在する。 第三百二十八条  不動産売買ノ先取特権ハ不動産ノ代価及ヒ其利息ニ付キ其不動産ノ上ニ存在ス  
第三節 先取特権の順位 第三節 先取特権ノ順位   
(一般の先取特権の順位)    
第三百二十九条 一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。 第三百二十九条  一般ノ先取特権カ互ニ競合スル場合ニ於テハ其優先権ノ順位ハ第三百六条ニ掲ケタル順序ニ従フ  
2 一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。 2 一般ノ先取特権ト特別ノ先取特権ト競合スル場合ニ於テハ特別ノ先取特権ハ一般ノ先取特権ニ先ツ但共益費用ノ先取特権ハ其利益ヲ受ケタル総債権者ニ対シテ優先ノ効力ヲ有ス  
(動産の先取特権の順位)    
第三百三十条 同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。 第三百三十条  同一ノ動産ニ付キ特別ノ先取特権カ互ニ競合スル場合ニ於テハ其優先権ノ順位左ノ如シ  
一 不動産の賃貸、旅館の宿泊及び運輸の先取特権 第一 不動産賃貸、旅店宿泊及ヒ運輸ノ先取特権  
二 動産の保存の先取特権 第二 動産保存ノ先取特権但数人ノ保存者アリタルトキハ後ノ保存者ハ前ノ保存者ニ先ツ  
三 動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務及び工業の労務の先取特権 第三 動産売買、種苗肥料供給及ヒ農工業労役ノ先取特権  
2 前項の場合において、第一順位の先取特権者は、その債権取得の時において第二順位又は第三順位の先取特権者があることを知っていたときは、これらの者に対して優先権を行使することができない。第一順位の先取特権者のために物を保存した者に対しても、同様とする。 2 第一順位ノ先取特権者カ債権取得ノ当時第二又ハ第三ノ順位ノ先取特権者アルコトヲ知リタルトキハ之ニ対シテ優先権ヲ行フコトヲ得ス第一順位者ノ為メニ物ヲ保存シタル者ニ対シ亦同シ  
3 果実に関しては、第一の順位は農業の労務に従事する者に、第二の順位は種苗又は肥料の供給者に、第三の順位は土地の賃貸人に属する。 3 果実ニ関シテハ第一ノ順位ハ農業ノ労役者ニ第二ノ順位ハ種苗又ハ肥料ノ供給者ニ第三ノ順位ハ土地ノ賃貸人ニ属ス  
(不動産の先取特権の順位)    
第三百三十一条 同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。 第三百三十一条  同一ノ不動産ニ付キ特別ノ先取特権カ互ニ競合スル場合ニ於テハ其優先権ノ順位ハ第三百二十五条ニ掲ケタル順序ニ従フ  
2 同一の不動産について売買が順次された場合には、売主相互間における不動産売買の先取特権の優先権の順位は、売買の前後による。 2 同一ノ不動産ニ付キ逐次ノ売買アリタルトキハ売主相互間ノ優先権ノ順位ハ時ノ前後ニ依ル  
(同一順位の先取特権)    
第三百三十二条 同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。 第三百三十二条  同一ノ目的物ニ付キ同一順位ノ先取特権者数人アルトキハ各其債権額ノ割合ニ応シテ弁済ヲ受ク  
第四節 先取特権の効力 第四節 先取特権ノ効力   
(先取特権と第三取得者)    
第三百三十三条 先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。 第三百三十三条  先取特権ハ債務者カ其動産ヲ第三取得者ニ引渡シタル後ハ其動産ニ付キ之ヲ行フコトヲ得ス  
(先取特権と動産質権との競合)    
第三百三十四条 先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第三百三十条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する。 第三百三十四条  先取特権ト動産質権ト競合スル場合ニ於テハ動産質権者ハ第三百三十条ニ掲ケタル第一順位ノ先取特権者ト同一ノ権利ヲ有ス  
(一般の先取特権の効力)    
第三百三十五条 一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない。 第三百三十五条  一般ノ先取特権者ハ先ツ不動産以外ノ財産ニ付キ弁済ヲ受ケ尚ホ不足アルニ非サレハ不動産ニ付キ弁済ヲ受クルコトヲ得ス  
2 一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない。 2 不動産ニ付テハ先ツ特別担保ノ目的タラサルモノニ付キ弁済ヲ受クルコトヲ要ス  
3 一般の先取特権者は、前二項の規定に従って配当に加入することを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることができた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行使することができない。 3 一般ノ先取特権者カ前二項ノ規定ニ従ヒテ配当ニ加入スルコトヲ怠リタルトキハ其配当加入ニ因リテ受クヘカリシモノノ限度ニ於テハ登記ヲ為シタル第三者ニ対シテ其先取特権ヲ行フコトヲ得ス  
4 前三項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的である不動産の代価を配当する場合には、適用しない。 4 前三項ノ規定ハ不動産以外ノ財産ノ代価ニ先チテ不動産ノ代価ヲ配当シ又ハ他ノ不動産ノ代価ニ先チテ特別担保ノ目的タル不動産ノ代価ヲ配当スヘキ場合ニハ之ヲ適用セス  
(一般の先取特権の対抗力)    
第三百三十六条 一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。 第三百三十六条  一般ノ先取特権ハ不動産ニ付キ登記ヲ為ササルモ之ヲ以テ特別担保ヲ有セサル債権者ニ対抗スルコトヲ妨ケス但登記ヲ為シタル第三者ニ対シテハ此限ニ在ラス  
(不動産保存の先取特権の登記)    
第三百三十七条 不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。 第三百三十七条  不動産保存ノ先取特権ハ保存行為完了ノ後直チニ登記ヲ為スニ因リテ其効力ヲ保存ス  
(不動産工事の先取特権の登記)    
第三百三十八条 不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。 第三百三十八条  不動産工事ノ先取特権ハ工事ヲ始ムル前ニ其費用ノ予算額ヲ登記スルニ因リテ其効力ヲ保存ス但工事ノ費用カ予算額ヲ超ユルトキハ先取特権ハ其超過額ニ付テハ存在セス  
2 工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が選任した鑑定人に評価させなければならない。 2 工事ニ因リテ生シタル不動産ノ増価額ハ配当加入ノ時裁判所ニ於テ選任シタル鑑定人ヲシテ之ヲ評価セシムルコトヲ要ス  
(登記をした不動産保存又は不動産工事の先取特権)    
第三百三十九条 前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。 第三百三十九条  前二条ノ規定ニ従ヒテ登記シタル先取特権ハ抵当権ニ先チテ之ヲ行フコトヲ得  
(不動産売買の先取特権の登記)    
第三百四十条 不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。 第三百四十条  不動産売買ノ先取特権ハ売買契約ト同時ニ未タ代価又ハ其利息ノ弁済アラサル旨ヲ登記スルニ因リテ其効力ヲ保存ス  
(抵当権に関する規定の準用)    
第三百四十一条 先取特権の効力については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、抵当権に関する規定を準用する。 第三百四十一条  先取特権ノ効力ニ付テハ本節ニ定メタルモノノ外抵当権ニ関スル規定ヲ準用ス  
第九章 質権 第九章 質権   
第一節 総則 第一節 総則   
(質権の内容)    
第三百四十二条 質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 第三百四十二条  質権者ハ其債権ノ担保トシテ債務者又ハ第三者ヨリ受取リタル物ヲ占有シ且其物ニ付キ他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス  
(質権の目的)    
第三百四十三条 質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない。 第三百四十三条  質権ハ譲渡スコトヲ得サル物ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得ス  
(質権の設定)    
第三百四十四条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。 第三百四十四条  質権ノ設定ハ債権者ニ其目的物ノ引渡ヲ為スニ因リテ其効力ヲ生ス  
(質権設定者による代理占有の禁止)    
第三百四十五条 質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。 第三百四十五条  質権者ハ質権設定者ヲシテ自己ニ代ハリテ質物ノ占有ヲ為サシムルコトヲ得ス  
(質権の被担保債権の範囲)    
第三百四十六条 質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。 第三百四十六条  質権ハ元本、利息、違約金、質権実行ノ費用、質物保存ノ費用及ヒ債務ノ不履行又ハ質物ノ隠レタル瑕疵ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ担保ス但設定行為ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス  
(質物の留置)    
第三百四十七条 質権者は、前条に規定する債権の弁済を受けるまでは、質物を留置することができる。ただし、この権利は、自己に対して優先権を有する債権者に対抗することができない。 第三百四十七条  質権者ハ前条ニ掲ケタル債権ノ弁済ヲ受クルマテハ質物ヲ留置スルコトヲ得但此権利ハ之ヲ以テ自己ニ対シ優先権ヲ有スル債権者ニ対抗スルコトヲ得ス  
(転質)    
第三百四十八条 質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。 第三百四十八条  質権者ハ其権利ノ存続期間内ニ於テ自己ノ責任ヲ以テ質物ヲ転質ト為スコトヲ得此場合ニ於テハ転質ヲ為ササレハ生セサルヘキ不可抗力ニ因ル損失ニ付テモ亦其責ニ任ス  
(契約による質物の処分の禁止)    
第三百四十九条 質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。 第三百四十九条  質権設定者ハ設定行為又ハ債務ノ弁済期前ノ契約ヲ以テ質権者ニ弁済トシテ質物ノ所有権ヲ取得セシメ其他法律ニ定メタル方法ニ依ラスシテ質物ヲ処分セシムルコトヲ約スルコトヲ得ス  
(留置権及び先取特権の規定の準用)    
第三百五十条 第二百九十六条から第三百条まで及び第三百四条の規定は、質権について準用する。 第三百五十条  第二百九十六条乃至第三百条及ヒ第三百四条ノ規定ハ質権ニ之ヲ準用ス  
(物上保証人の求償権)    
第三百五十一条 他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。 第三百五十一条  他人ノ債務ヲ担保スル為メ質権ヲ設定シタル者カ其債務ヲ弁済シ又ハ質権ノ実行ニ因リテ質物ノ所有権ヲ失ヒタルトキハ保証債務ニ関スル規定ニ従ヒ債務者ニ対シテ求償権ヲ有ス  
第二節 動産質 第二節 動産質   
(動産質の対抗要件)    
第三百五十二条 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。 第三百五十二条  動産質権者ハ継続シテ質物ヲ占有スルニ非サレハ其質権ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス  
(質物の占有の回復)    
第三百五十三条 動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。 第三百五十三条  動産質権者カ質物ノ占有ヲ奪ハレタルトキハ占有回収ノ訴ニ依リテノミ其質物ヲ回復スルコトヲ得  
(動産質権の実行)    
第三百五十四条 動産質権者は、その債権の弁済を受けないときは、正当な理由がある場合に限り、鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充てることを裁判所に請求することができる。この場合において、動産質権者は、あらかじめ、その請求をする旨を債務者に通知しなければならない。 第三百五十四条  動産質権者カ其債権ノ弁済ヲ受ケサルトキハ正当ノ理由アル場合ニ限リ鑑定人ノ評価ニ従ヒ質物ヲ以テ直チニ弁済ニ充ツルコトヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ質権者ハ予メ債務者ニ其請求ヲ通知スルコトヲ要ス  
(動産質権の順位)    
第三百五十五条 同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。 第三百五十五条  数個ノ債権ヲ担保スル為メ同一ノ動産ニ付キ質権ヲ設定シタルトキハ其質権ノ順位ハ設定ノ前後ニ依ル  
第三節 不動産質 第三節 不動産質   
(不動産質権者による使用及び収益)    
第三百五十六条 不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる。 第三百五十六条  不動産質権者ハ質権ノ目的タル不動産ノ用方ニ従ヒ其使用及ヒ収益ヲ為スコトヲ得  
(不動産質権者による管理の費用等の負担)    
第三百五十七条 不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う。 第三百五十七条  不動産質権者ハ管理ノ費用ヲ払ヒ其他不動産ノ負担ニ任ス  
(不動産質権者による利息の請求の禁止)    
第三百五十八条 不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない。 第三百五十八条  不動産質権者ハ其債権ノ利息ヲ請求スルコトヲ得ス  
(設定行為に別段の定めがある場合等)    
第三百五十九条 前三条の規定は、設定行為に別段の定めがあるとき、又は担保不動産収益執行(民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百八十条第二号に規定する担保不動産収益執行をいう。以下同じ。)の開始があったときは、適用しない。 第三百五十九条  前三条ノ規定ハ設定行為ニ別段ノ定アルトキハ之ヲ適用セス  
(不動産質権の存続期間)    
第三百六十条 不動産質権の存続期間は、十年を超えることができない。設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、十年とする。 第三百六十条  不動産質ノ存続期間ハ十年ヲ超ユルコトヲ得ス若シ之ヨリ長キ期間ヲ以テ不動産質ヲ設定シタルトキハ其期間ハ之ヲ十年ニ短縮ス  
2 不動産質権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から十年を超えることができない。 2 不動産質ノ設定ハ之ヲ更新スルコトヲ得但其期間ハ更新ノ時ヨリ十年ヲ超ユルコトヲ得ス  
(抵当権の規定の準用)    
第三百六十一条 不動産質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、次章(抵当権)の規定を準用する。 第三百六十一条  不動産質ニハ本節ノ規定ノ外次章ノ規定ヲ準用ス  
第四節 権利質 第四節 権利質   
(権利質の目的等)    
第三百六十二条 質権は、財産権をその目的とすることができる。 第三百六十二条  質権ハ財産権ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得  
2 前項の質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、前三節(総則、動産質及び不動産質)の規定を準用する。 2 前項ノ質権ニハ本節ノ規定ノ外前三節ノ規定ヲ準用ス  
(債権質の設定)    
第三百六十三条 債権であってこれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは、質権の設定は、その証書を交付することによって、その効力を生ずる。 第三百六十三条  債権ヲ以テ質権ノ目的ト為ス場合ニ於テ其債権ノ証書アルトキハ質権ノ設定ハ其証書ノ交付ヲ為スニ因リテ其効力ヲ生ス  
(指名債権を目的とする質権の対抗要件)    
第三百六十四条 指名債権を質権の目的としたときは、第四百六十七条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。 第三百六十四条  指名債権ヲ以テ質権ノ目的ト為シタルトキハ第四百六十七条ノ規定ニ従ヒ第三債務者ニ質権ノ設定ヲ通知シ又ハ第三債務者カ之ヲ承諾スルニ非サレハ之ヲ以テ第三債務者其他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス  
2 前項の規定は、株式については、適用しない。 2 前項ノ規定ハ株式ニハ之ヲ適用セス  
(記名社債を目的とする質権の対抗要件)    
第三百六十五条 記名社債を質権の目的としたときは、社債の譲渡に関する規定に従い会社の帳簿に質権の設定を記入しなければ、これをもって会社その他の第三者に対抗することができない。 第三百六十五条  記名ノ社債ヲ以テ質権ノ目的ト為シタルトキハ社債ノ譲渡ニ関スル規定ニ従ヒ会社ノ帳簿ニ質権ノ設定ヲ記入スルニ非サレハ之ヲ以テ会社其他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス  
(指図債権を目的とする質権の対抗要件)    
第三百六十六条 指図債権を質権の目的としたときは、その証書に質権の設定の裏書をしなければ、これをもって第三者に対抗することができない。 第三百六十六条  指図債権ヲ以テ質権ノ目的ト為シタルトキハ其証書ニ質権ノ設定ヲ裏書スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス  
(質権者による債権の取立て等)    
第三百六十七条 質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。 第三百六十七条  質権者ハ質権ノ目的タル債権ヲ直接ニ取立ツルコトヲ得  
2 債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。 2 債権ノ目的物カ金銭ナルトキハ質権者ハ自己ノ債権額ニ対スル部分ニ限リ之ヲ取立ツルコトヲ得  
3 前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。 3 右ノ債権ノ弁済期カ質権者ノ債権ノ弁済期前ニ到来シタルトキハ質権者ハ第三債務者ヲシテ其弁済金額ヲ供託セシムルコトヲ得此場合ニ於テハ質権ハ其供託金ノ上ニ存在ス  
4 債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けた物について質権を有する。 4 債権ノ目的物カ金銭ニ非サルトキハ質権者ハ弁済トシテ受ケタル物ノ上ニ質権ヲ有ス  
第三百六十八条 削除 第三百六十八条  削除  
第十章 抵当権 第十章 抵当権   
第一節 総則    
(抵当権の内容) 第一節 総則   
第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 第三百六十九条  抵当権者ハ債務者又ハ第三者カ占有ヲ移サスシテ債務ノ担保ニ供シタル不動産ニ付キ他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス  
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。 2 地上権及ヒ永小作権モ亦之ヲ抵当権ノ目的ト為スコトヲ得此場合ニ於テハ本章ノ規定ヲ準用ス  
(抵当権の効力の及ぶ範囲)    
第三百七十条 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。 第三百七十条  抵当権ハ抵当地ノ上ニ存スル建物ヲ除ク外其目的タル不動産ニ附加シテ之ト一体ヲ成シタル物ニ及フ但設定行為ニ別段ノ定アルトキ及ヒ第四百二十四条ノ規定ニ依リ債権者カ債務者ノ行為ヲ取消スコトヲ得ル場合ハ此限ニ在ラス  
第三百七十一条 抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。 第三百七十一条  前条ノ規定ハ果実ニハ之ヲ適用セス但抵当不動産ノ差押アリタル後又ハ第三取得者カ第三百八十一条ノ通知ヲ受ケタル後ハ此限ニ在ラス  
  2 第三取得者カ第三百八十一条ノ通知ヲ受ケタルトキハ其後一年内ニ抵当不動産ノ差押アリタル場合ニ限リ前項但書ノ規定ヲ適用ス  
(留置権等の規定の準用)    
第三百七十二条 第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。 第三百七十二条  第二百九十六条、第三百四条及ヒ第三百五十一条ノ規定ハ抵当権ニ之ヲ準用ス  
第二節 抵当権の効力 第二節 抵当権ノ効力   
(抵当権の順位)    
第三百七十三条 同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。 第三百七十三条  数個ノ債権ヲ担保スル為メ同一ノ不動産ニ付キ抵当権ヲ設定シタルトキハ其抵当権ノ順位ハ登記ノ前後ニ依ル  
(抵当権の順位の変更)    
第三百七十四条 抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。 2 抵当権ノ順位ハ各抵当権者ノ合意ニ依リテ之ヲ変更スルコトヲ得但利害ノ関係ヲ有スル者アルトキハ其承諾ヲ得ルコトヲ要ス  
2 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。 3 前項ノ順位ノ変更ハ其登記ヲ為スニ非ザレバ其効力ヲ生ゼズ  
(抵当権の被担保債権の範囲)    
第三百七十五条 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。 第三百七十四条  抵当権者カ利息其他ノ定期金ヲ請求スル権利ヲ有スルトキハ其満期ト為リタル最後ノ二年分ニ付テノミ其抵当権ヲ行フコトヲ得但其以前ノ定期金ニ付テモ満期後特別ノ登記ヲ為シタルトキハ其登記ノ時ヨリ之ヲ行フコトヲ妨ケス  
2 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。 2 前項ノ規定ハ抵当権者カ債務ノ不履行ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ請求スル権利ヲ有スル場合ニ於テ其最後ノ二年分ニ付テモ亦之ヲ適用ス但利息其他ノ定期金ト通シテ二年分ヲ超ユルコトヲ得ス  
(抵当権の処分)    
第三百七十六条 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。 第三百七十五条  抵当権者ハ其抵当権ヲ以テ他ノ債権ノ担保ト為シ又同一ノ債務者ニ対スル他ノ債権者ノ利益ノ為メ其抵当権若クハ其順位ヲ譲渡シ又ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得  
2 前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。 2 前項ノ場合ニ於テ抵当権者カ数人ノ為メニ其抵当権ノ処分ヲ為シタルトキハ其処分ノ利益ヲ受クル者ノ権利ノ順位ハ抵当権ノ登記ニ附記ヲ為シタル前後ニ依ル  
(抵当権の処分の対抗要件)    
第三百七十七条 前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。 第三百七十六条  前条ノ場合ニ於テハ第四百六十七条ノ規定ニ従ヒ主タル債務者ニ抵当権ノ処分ヲ通知シ又ハ其債務者カ之ヲ承諾スルニ非サレハ之ヲ以テ其債務者、保証人、抵当権設定者及ヒ其承継人ニ対抗スルコトヲ得ス  
2 主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。 2 主タル債務者カ前項ノ通知ヲ受ケ又ハ承諾ヲ為シタルトキハ抵当権ノ処分ノ利益ヲ受クル者ノ承諾ナクシテ為シタル弁済ハ之ヲ以テ其受益者ニ対抗スルコトヲ得ス  
(代価弁済)    
第三百七十八条 抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。 第三百七十七条  抵当不動産ニ付キ所有権又ハ地上権ヲ買受ケタル第三者カ抵当権者ノ請求ニ応シテ之ニ其代価ヲ弁済シタルトキハ抵当権ハ其第三者ノ為メニ消滅ス  
(抵当権消滅請求)    
第三百七十九条 抵当不動産の第三取得者は、第三百八十三条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。 第三百七十八条  抵当不動産ニ付キ所有権ヲ取得シタル第三者ハ抵当権消滅請求(第三百八十三条ノ規定ニ依リ同条第三号ノ代価又ハ金額ヲ抵当権者ニ提供シテ抵当権ノ消滅ヲ請求スルコトヲ謂フ以下同ジ)ヲ為スコトヲ得  
第三百八十条 主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。 第三百七十九条  主タル債務者、保証人及ヒ其承継人ハ抵当権消滅請求ヲ為スコトヲ得ス  
第三百八十一条 抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない。 第三百八十条  停止条件付第三取得者ハ条件ノ成否未定ノ間ハ抵当権消滅請求ヲ為スコトヲ得ス  
  第三百八十一条  削除  
(抵当権消滅請求の時期)    
第三百八十二条 抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。 第三百八十二条  第三取得者ハ抵当権ノ実行トシテノ競売ニ因ル差押ノ効力発生前ニ抵当権消滅請求ヲ為スコトヲ要ス  
(抵当権消滅請求の手続)    
第三百八十三条 抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。 第三百八十三条  第三取得者カ抵当権ヲ消滅セシメント欲スルトキハ登記ヲ為シタル各債権者ニ左ノ書面ヲ送達スルコトヲ要ス  
一 取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面 一  取得ノ原因、年月日、譲渡人及ヒ取得者ノ氏名、住所、抵当不動産ノ性質、所在、代価其他取得者ノ負担ヲ記載シタル書面  
二 抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。) 二  抵当不動産ニ関スル登記簿ノ謄本但既ニ消滅シタル権利ニ関スル登記ハ之ヲ掲クルコトヲ要セス  
三 債権者が二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第一号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面 三  債権者カ二箇月内ニ抵当権ヲ実行シテ競売ノ申立ヲ為サザルトキハ第三取得者ハ第一号ニ掲ケタル代価又ハ特ニ指定シタル金額ヲ債権ノ順位ニ従ヒテ弁済又ハ供託スヘキ旨ヲ記載シタル書面  
(債権者のみなし承諾)    
第三百八十四条 次に掲げる場合には、前条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、抵当不動産の第三取得者が同条第三号に掲げる書面に記載したところにより提供した同号の代価又は金額を承諾したものとみなす。 第三百八十四条  左ノ場合ニ於テハ前条ノ送達ヲ受ケタル債権者ハ第三取得者ガ同条ノ規定ニ依リ提供シタル同条第三号ノ代価又ハ金額ヲ承諾シタルモノト看做ス  
一 その債権者が前条各号に掲げる書面の送付を受けた後二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないとき。 一  其債権者ガ前条ノ送達ヲ受ケタル後二箇月内ニ抵当権ヲ実行シテ競売ノ申立ヲ為サザルトキ  
二 その債権者が前号の申立てを取り下げたとき。 二  其債権者ガ前号ノ申立ヲ取下ゲタルトキ  
三 第一号の申立てを却下する旨の決定が確定したとき。 三  第一号ノ申立ヲ却下スル旨ノ決定ガ確定シタルトキ  
四 第一号の申立てに基づく競売の手続を取り消す旨の決定(民事執行法第百八十八条において準用する同法第六十三条第三項若しくは第六十八条の三第三項の規定又は同法第百八十三条第一項第五号の謄本が提出された場合における同条第二項の規定による決定を除く。)が確定したとき。 四  第一号ノ申立ニ基ク競売ノ手続ヲ取消ス旨ノ決定(民事執行法第百八十八条 ニ於テ準用スル同法第六十三条第三項 若クハ第六十八条の三第三項 又ハ同法第百八十三条第一項第五号 ノ謄本ガ提出セラレタル場合ニ於ケル同条第二項 ノ規定ニ依ルモノヲ除ク)ガ確定シタルトキ  
(競売の申立ての通知)    
第三百八十五条 第三百八十三条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、前条第一号の申立てをするときは、同号の期間内に、債務者及び抵当不動産の譲渡人にその旨を通知しなければならない。 第三百八十五条  第三百八十三条ノ送達ヲ受ケタル債権者ガ前条第一号ノ申立ヲ為ストキハ同号ノ期間内ニ債務者及ヒ抵当不動産ノ譲渡人ニ之ヲ通知スルコトヲ要ス  
(抵当権消滅請求の効果)    
第三百八十六条 登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は、消滅する。 第三百八十六条  登記ヲ為シタル総テノ債権者ガ第三取得者ノ提供シタル代価又ハ金額ヲ承諾シ且第三取得者ガ其承諾ヲ得タル代価若クハ金額ヲ払渡シ又ハ之ヲ供託シタルトキハ抵当権ハ消滅ス  
(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力)    
第三百八十七条 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。 第三百八十七条  登記シタル賃貸借ハ其登記前ニ登記シタル抵当権ヲ有スル総テノ者ガ同意シ且其同意ノ登記アルトキハ之ヲ以テ其同意ヲ為シタル抵当権者ニ対抗スルコトヲ得  
2 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。 2 抵当権者ガ前項ノ同意ヲ為スニハ其抵当権ヲ目的トスル権利ヲ有スル者其他抵当権者ノ同意ニ因リテ不利益ヲ受クベキ者ノ承諾ヲ得ルコトヲ要ス  
(法定地上権)    
第三百八十八条 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。 第三百八十八条  土地及ヒ其上ニ存スル建物カ同一ノ所有者ニ属スル場合ニ於テ其土地又ハ建物ノミヲ抵当ト為シタルトキハ抵当権設定者ハ競売ノ場合ニ付キ地上権ヲ設定シタルモノト看做ス但地代ハ当事者ノ請求ニ因リ裁判所之ヲ定ム  
(抵当地の上の建物の競売)    
第三百八十九条 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。 第三百八十九条  抵当権設定ノ後抵当地ニ建物ガ築造セラレタルトキハ抵当権者ハ土地ト共ニ其建物ヲ競売スルコトヲ得但其優先権ハ土地ノ代価ニ付テノミ之ヲ行フコトヲ得  
2 前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。 2 前項ノ規定ハ其建物ノ所有者ガ抵当地ヲ占有スルニ付キ抵当権者ニ対抗スルコトヲ得ベキ権利ヲ有スル場合ニハ之ヲ適用セズ  
(抵当不動産の第三取得者による買受け)    
第三百九十条 抵当不動産の第三取得者は、その競売において買受人となることができる。 第三百九十条  第三取得者ハ競買人ト為ルコトヲ得  
(抵当不動産の第三取得者による費用の償還請求)    
第三百九十一条 抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、第百九十六条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。 第三百九十一条  第三取得者カ抵当不動産ニ付キ必要費又ハ有益費ヲ出タシタルトキハ第百九十六条ノ区別ニ従ヒ不動産ノ代価ヲ以テ最モ先ニ其償還ヲ受クルコトヲ得  
(共同抵当における代価の配当)    
第三百九十二条 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。 第三百九十二条  債権者カ同一ノ債権ノ担保トシテ数個ノ不動産ノ上ニ抵当権ヲ有スル場合ニ於テ同時ニ其代価ヲ配当スヘキトキハ其各不動産ノ価額ニ準シテ其債権ノ負担ヲ分ツ  
2 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。 2 或不動産ノ代価ノミヲ配当スヘキトキハ抵当権者ハ其代価ニ付キ債権ノ全部ノ弁済ヲ受クルコトヲ得此場合ニ於テハ次ノ順位ニ在ル抵当権者ハ前項ノ規定ニ従ヒ右ノ抵当権者カ他ノ不動産ニ付キ弁済ヲ受クヘキ金額ニ満ツルマテ之ニ代位シテ抵当権ヲ行フコトヲ得  
(共同抵当における代位の付記登記)    
第三百九十三条 前条第二項後段の規定により代位によって抵当権を行使する者は、その抵当権の登記にその代位を付記することができる。 第三百九十三条  前条ノ規定ニ従ヒ代位ニ因リテ抵当権ヲ行フ者ハ其抵当権ノ登記ニ其代位ヲ附記スルコトヲ得  
(抵当不動産以外の財産からの弁済)    
第三百九十四条 抵当権者は、抵当不動産の代価から弁済を受けない債権の部分についてのみ、他の財産から弁済を受けることができる。 第三百九十四条  抵当権者ハ抵当不動産ノ代価ヲ以テ弁済ヲ受ケサル債権ノ部分ニ付テノミ他ノ財産ヲ以テ弁済ヲ受クルコトヲ得  
2 前項の規定は、抵当不動産の代価に先立って他の財産の代価を配当すべき場合には、適用しない。この場合において、他の各債権者は、抵当権者に同項の規定による弁済を受けさせるため、抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる。 2 前項ノ規定ハ抵当不動産ノ代価ニ先チテ他ノ財産ノ代価ヲ配当スヘキ場合ニハ之ヲ適用セス但他ノ各債権者ハ抵当権者ヲシテ前項ノ規定ニ従ヒ弁済ヲ受ケシムル為メ之ニ配当スヘキ金額ノ供託ヲ請求スルコトヲ得  
(抵当建物使用者の引渡しの猶予)    
第三百九十五条 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。 第三百九十五条  抵当権者ニ対抗スルコトヲ得ザル賃貸借ニ因リ抵当権ノ目的タル建物ノ使用又ハ収益ヲ為ス者ニシテ左ニ掲ゲタルモノ(以下建物使用者ト称ス)ハ其建物ノ競売ノ場合ニ於テ買受人ノ買受ノ時ヨリ六箇月ヲ経過スルマデハ其建物ヲ買受人ニ引渡スコトヲ要セズ  
一 競売手続の開始前から使用又は収益をする者 一  競売手続ノ開始前ヨリ使用又ハ収益ヲ為ス者  
二 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者 二  強制管理又ハ担保不動産収益執行ノ管理人ガ競売手続ノ開始後ニ為シタル賃貸借ニ因リ使用又ハ収益ヲ為ス者  
2 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。 2 前項ノ規定ハ買受人ノ買受ノ時ヨリ後ニ同項ノ建物ノ使用ヲ為シタルコトノ対価ニ付キ買受人ガ建物使用者ニ対シ相当ノ期間ヲ定メテ其一月分以上ノ支払ヲ催告シ其相当ノ期間内ニ履行ナキ場合ニハ之ヲ適用セズ  
第三節 抵当権の消滅 第三節 抵当権ノ消滅  
(抵当権の消滅時効)    
第三百九十六条 抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。 第三百九十六条  抵当権ハ債務者及ヒ抵当権設定者ニ対シテハ其担保スル債権ト同時ニ非サレハ時効ニ因リテ消滅セス  
(抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅)    
第三百九十七条 債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。 第三百九十七条  債務者又ハ抵当権設定者ニ非サル者カ抵当不動産ニ付キ取得時効ニ必要ナル条件ヲ具備セル占有ヲ為シタルトキハ抵当権ハ之ニ因リテ消滅ス  
(抵当権の目的である地上権等の放棄)    
第三百九十八条 地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。 第三百九十八条  地上権又ハ永小作権ヲ抵当ト為シタル者カ其権利ヲ抛棄シタルモ之ヲ以テ抵当権者ニ対抗スルコトヲ得ス  
第四節 根抵当 第四節 根抵当  
(根抵当権)    
第三百九十八条の二 抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。 第三百九十八条ノ二  抵当権ハ設定行為ヲ以テ定ムル所ニ依リ一定ノ範囲ニ属スル不特定ノ債権ヲ極度額ノ限度ニ於テ担保スル為メニモ之ヲ設定スルコトヲ得  
2 前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。 2 前項ノ抵当権(以下根抵当権ト称ス)ノ担保スベキ不特定ノ債権ノ範囲ハ債務者トノ特定ノ継続的取引契約ニ因リテ生ズルモノ其他債務者トノ一定ノ種類ノ取引ニ因リテ生ズルモノニ限定シテ之ヲ定ムルコトヲ要ス  
3 特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権又は手形上若しくは小切手上の請求権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。 3 特定ノ原因ニ基キ債務者トノ間ニ継続シテ生ズル債権又ハ手形上若クハ小切手上ノ請求権ハ前項ノ規定ニ拘ハラズ之ヲ根抵当権ノ担保スベキ債権ト為スコトヲ得  
(根抵当権の被担保債権の範囲)    
第三百九十八条の三 根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。 第三百九十八条ノ三  根抵当権者ハ確定シタル元本並ニ利息其他ノ定期金及ビ債務ノ不履行ニ因リテ生ジタル損害ノ賠償ノ全部ニ付キ極度額ヲ限度トシテ其根抵当権ヲ行フコトヲ得  
2 債務者との取引によらないで取得する手形上又は小切手上の請求権を根抵当権の担保すべき債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その根抵当権を行使することができる。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げない。 2 債務者トノ取引ニ因ラズシテ取得スル手形上又ハ小切手上ノ請求権ヲ根抵当権ノ担保スベキ債権ト為シタル場合ニ於テ債務者ガ支払ヲ停止シタルトキ、債務者ニ付キ破産、再生手続開始、更生手続開始、整理開始若クハ特別清算開始ノ申立アリタルトキ又ハ抵当不動産ニ対スル競売ノ申立若クハ滞納処分ニ因ル差押アリタルトキハ其前ニ取得シタルモノニ付テノミ其根抵当権ヲ行フコトヲ得但其事実ヲ知ラズシテ取得シタルモノニ付テモ之ヲ行フコトヲ妨ゲズ  
一 債務者の支払の停止    
二 債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始、整理開始又は特別清算開始の申立て    
三 抵当不動産に対する競売の申立て又は滞納処分による差押え    
(根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更)    
第三百九十八条の四 元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。 第三百九十八条ノ四  元本ノ確定前ニ於テハ根抵当権ノ担保スベキ債権ノ範囲ノ変更ヲ為スコトヲ得債務者ノ変更ニ付キ亦同ジ  
2 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。 2 前項ノ変更ヲ為スニハ後順位ノ抵当権者其他ノ第三者ノ承諾ヲ得ルコトヲ要セズ  
3 第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。 3 第一項ノ変更ニ付キ元本ノ確定前ニ登記ヲ為サザルトキハ其変更ハ之ヲ為サザリシモノト看做ス  
(根抵当権の極度額の変更)    
第三百九十八条の五 根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。 第三百九十八条ノ五  根抵当権ノ極度額ノ変更ハ利害ノ関係ヲ有スル者ノ承諾ヲ得ルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ  
(根抵当権の元本確定期日の定め)    
第三百九十八条の六 根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。 第三百九十八条ノ六  根抵当権ノ担保スベキ元本ニ付テハ其確定スベキ期日ヲ定メ又ハ之ヲ変更スルコトヲ得  
2 第三百九十八条の四第二項の規定は、前項の場合について準用する。 2 第三百九十八条ノ四第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス  
3 第一項の期日は、これを定め又は変更した日から五年以内でなければならない。 3 第一項ノ期日ハ之ヲ定メ又ハ変更シタル日ヨリ五年内タルコトヲ要ス  
4 第一項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する。 4 第一項ノ期日ノ変更ニ付キ其期日前ニ登記ヲ為サザルトキハ担保スベキ元本ハ其期日ニ於テ確定ス  
(根抵当権の被担保債権の譲渡等)    
第三百九十八条の七 元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。 第三百九十八条ノ七  元本ノ確定前ニ根抵当権者ヨリ債権ヲ取得シタル者ハ其債権ニ付キ根抵当権ヲ行フコトヲ得ズ元本ノ確定前ニ債務者ノ為メニ又ハ債務者ニ代ハリテ弁済ヲ為シタル者亦同ジ  
2 元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない。 2 元本ノ確定前ニ債務ノ引受アリタルトキハ根抵当権者ハ引受人ノ債務ニ付キ其根抵当権ヲ行フコトヲ得ズ  
3 元本の確定前に債権者又は債務者の交替による更改があったときは、その当事者は、第五百十八条の規定にかかわらず、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。 第三百九十八条ノ八  元本ノ確定前ニ債権者又ハ債務者ノ交替ニ因ル更改アリタルトキハ其当事者ハ第五百十八条ノ規定ニ拘ハラズ根抵当権ヲ新債務ニ移スコトヲ得ズ  
(根抵当権者又は債務者の相続)    
第三百九十八条の八 元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。 第三百九十八条ノ九  元本ノ確定前ニ根抵当権者ニ付キ相続ガ開始シタルトキハ根抵当権ハ相続開始ノ時ニ存スル債権ノ外相続人ト根抵当権設定者トノ合意ニ依リ定メタル相続人ガ相続ノ開始後ニ取得スル債権ヲ担保ス  
2 元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。 2 元本ノ確定前ニ債務者ニ付キ相続ガ開始シタルトキハ根抵当権ハ相続開始ノ時ニ存スル債務ノ外根抵当権者ト根抵当権設定者トノ合意ニ依リ定メタル相続人ガ相続ノ開始後ニ負担スル債務ヲ担保ス  
3 第三百九十八条の四第二項の規定は、前二項の合意をする場合について準用する。 3 第三百九十八条ノ四第二項ノ規定ハ前二項ノ合意ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス  
4 第一項及び第二項の合意について相続の開始後六箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす。 4 第一項及ビ第二項ノ合意ニ付キ相続ノ開始後六个月内ニ登記ヲ為サザルトキハ担保スベキ元本ハ相続開始ノ時ニ於テ確定シタルモノト看做ス  
(根抵当権者又は債務者の合併)    
第三百九十八条の九 元本の確定前に根抵当権者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保する。 第三百九十八条ノ十  元本ノ確定前ニ根抵当権者ニ付キ合併アリタルトキハ根抵当権ハ合併ノ時ニ存スル債権ノ外合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ガ合併後ニ取得スル債権ヲ担保ス  
2 元本の確定前にその債務者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債務のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保する。 2 元本ノ確定前ニ債務者ニ付キ合併アリタルトキハ根抵当権ハ合併ノ時ニ存スル債務ノ外合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ガ合併後ニ負担スル債務ヲ担保ス  
3 前二項の場合には、根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定を請求することができる。ただし、前項の場合において、その債務者が根抵当権設定者であるときは、この限りでない。 3 前二項ノ場合ニ於テハ根抵当権設定者ハ担保スベキ元本ノ確定ヲ請求スルコトヲ得但前項ノ場合ニ於テ其債務者ガ根抵当権設定者ナルトキハ此限ニ在ラズ  
4 前項の規定による請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなす。 4 前項ノ請求アリタルトキハ担保スベキ元本ハ合併ノ時ニ於テ確定シタルモノト看做ス  
5 第三項の規定による請求は、根抵当権設定者が合併のあったことを知った日から二週間を経過したときは、することができない。合併の日から一箇月を経過したときも、同様とする。 5 第三項ノ請求ハ根抵当権設定者ガ合併アリタルコトヲ知リタル日ヨリ二週間ヲ経過シタルトキハ之ヲ為スコトヲ得ズ合併ノ日ヨリ一个月ヲ経過シタルトキ亦同ジ  
(根抵当権者又は債務者の会社分割)    
第三百九十八条の十 元本の確定前に根抵当権者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債権のほか、分割をした会社及び分割によって設立された会社又は営業を承継した会社が分割後に取得する債権を担保する。 第三百九十八条ノ十ノ二  元本ノ確定前ニ根抵当権者ヲ分割ヲ為ス会社トスル分割アリタルトキハ根抵当権ハ分割ノ時ニ存スル債権ノ外分割ヲ為シタル会社及ビ分割ニ因リテ設立シタル会社又ハ営業ヲ承継シタル会社ガ分割後ニ取得スル債権ヲ担保ス  
2 元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割によって設立された会社又は営業を承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。 2 元本ノ確定前ニ債務者ヲ分割ヲ為ス会社トスル分割アリタルトキハ根抵当権ハ分割ノ時ニ存スル債務ノ外分割ヲ為シタル会社及ビ分割ニ因リテ設立シタル会社又ハ営業ヲ承継シタル会社ガ分割後ニ負担スル債務ヲ担保ス  
3 前条第三項から第五項までの規定は、前二項の場合について準用する。 3 前条第三項乃至第五項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス  
(根抵当権の処分)    
第三百九十八条の十一 元本の確定前においては、根抵当権者は、第三百七十六条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。 第三百九十八条ノ十一  元本ノ確定前ニ於テハ根抵当権者ハ第三百七十五条第一項ノ処分ヲ為スコトヲ得ズ但其根抵当権ヲ以テ他ノ債権ノ担保ト為スコトヲ妨ゲズ  
2 第三百七十七条第二項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない。 2 第三百七十六条第二項ノ規定ハ前項但書ノ場合ニ於テ元本ノ確定前ニ為シタル弁済ニ付テハ之ヲ適用セズ  
(根抵当権の譲渡)    
第三百九十八条の十二 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。 第三百九十八条ノ十二  元本ノ確定前ニ於テハ根抵当権者ハ根抵当権設定者ノ承諾ヲ得テ其根抵当権ヲ譲渡スコトヲ得  
2 根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。 2 根抵当権者ハ其根抵当権ヲ二個ノ根抵当権ニ分割シテ其一ヲ前項ノ規定ニ依リ譲渡スコトヲ得此場合ニ於テハ其根抵当権ヲ目的トスル権利ハ譲渡シタル根抵当権ニ付キ消滅ス  
3 前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。 3 前項ノ譲渡ヲ為スニハ其根抵当権ヲ目的トスル権利ヲ有スル者ノ承諾ヲ得ルコトヲ要ス  
(根抵当権の一部譲渡)    
第三百九十八条の十三 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。以下この節において同じ。)をすることができる。 第三百九十八条ノ十三  元本ノ確定前ニ於テハ根抵当権者ハ根抵当権設定者ノ承諾ヲ得テ其根抵当権ノ一部譲渡ヲ為シ之ヲ譲受人ト共有スルコトヲ得  
(根抵当権の共有)    
第三百九十八条の十四 根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。 第三百九十八条ノ十四  根抵当権ノ共有者ハ各其債権額ノ割合ニ応ジテ弁済ヲ受ク但元本ノ確定前ニ之ト異ナル割合ヲ定メ又ハ或者ガ他ノ者ニ先チテ弁済ヲ受クベキコトヲ定メタルトキハ其定ニ従フ  
2 根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第三百九十八条の十二第一項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。 2 根抵当権ノ共有者ハ他ノ共有者ノ同意ヲ得テ第三百九十八条ノ十二第一項ノ規定ニ依リ其権利ヲ譲渡スコトヲ得  
(抵当権の順位の譲渡又は放棄と根抵当権の譲渡又は一部譲渡)    
第三百九十八条の十五 抵当権の順位の譲渡又は放棄を受けた根抵当権者が、その根抵当権の譲渡又は一部譲渡をしたときは、譲受人は、その順位の譲渡又は放棄の利益を受ける。 第三百九十八条ノ十五  抵当権ノ順位ノ譲渡又ハ抛棄ヲ受ケタル根抵当権者ガ其根抵当権ノ譲渡又ハ一部譲渡ヲ為シタルトキハ譲受人ハ其順位ノ譲渡又ハ抛棄ノ利益ヲ受ク  
(共同根抵当)    
第三百九十八条の十六 第三百九十二条及び第三百九十三条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する。 第三百九十八条ノ十六  第三百九十二条及ビ第三百九十三条ノ規定ハ根抵当権ニ付テハ其設定ト同時ニ同一ノ債権ノ担保トシテ数個ノ不動産ノ上ニ根抵当権ガ設定セラレタル旨ヲ登記シタル場合ニ限リ之ヲ適用ス  
(共同根抵当の変更等)    
第三百九十八条の十七 前条の登記がされている根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者若しくは極度額の変更又はその譲渡若しくは一部譲渡は、その根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ、その効力を生じない。 第三百九十八条ノ十七  前条ノ登記アル根抵当権ノ担保スベキ債権ノ範囲、債務者若クハ極度額ノ変更又ハ其譲渡若クハ一部譲渡ハ総テノ不動産ニ付キ其登記ヲ為スニ非ザレバ其効力ヲ生ゼズ  
2 前条の登記がされている根抵当権の担保すべき元本は、一個の不動産についてのみ確定すべき事由が生じた場合においても、確定する。 2 前条ノ登記アル根抵当権ノ担保スベキ元本ハ一ノ不動産ニ付テノミ確定スベキ事由ガ生ジタル場合ニ於テモ亦確定ス  
(累積根抵当)    
第三百九十八条の十八 数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第三百九十八条の十六の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができる。 第三百九十八条ノ十八  数個ノ不動産ノ上ニ根抵当権ヲ有スル者ハ第三百九十八条ノ十六ノ場合ヲ除ク外各不動産ノ代価ニ付キ各極度額ニ至ルマデ優先権ヲ行フコトヲ得  
(根抵当権の元本の確定請求)    
第三百九十八条の十九 根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。 第三百九十八条ノ十九  根抵当権設定者ハ根抵当権設定ノ時ヨリ三年ヲ経過シタルトキハ担保スベキ元本ノ確定ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ担保スベキ元本ハ其請求ノ時ヨリ二週間ヲ経過シタルニ因リテ確定ス  
2 根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。 2 根抵当権者ハ何時ニテモ担保スベキ元本ノ確定ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ担保スベキ元本ハ其請求ノ時ニ於テ確定ス  
3 前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。 3 前二項ノ規定ハ担保スベキ元本ノ確定スベキ期日ノ定アルトキハ之ヲ適用セズ  
(根抵当権の元本の確定事由)    
第三百九十八条の二十 次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。 第三百九十八条ノ二十  左ノ場合ニ於テハ根抵当権ノ担保スベキ元本ハ確定ス  
一 根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第三百七十二条において準用する第三百四条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。 一  根抵当権者ガ抵当不動産ニ付キ競売若クハ担保不動産収益執行又ハ第三百七十二条ニ於テ準用スル第三百四条ノ規定ニ依ル差押ヲ申立テタルトキ但競売手続若クハ担保不動産収益執行手続ノ開始又ハ差押アリタルトキニ限ル  
二 根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。 二  根抵当権者ガ抵当不動産ニ対シ滞納処分ニ因ル差押ヲ為シタルトキ  
三 根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。 三  根抵当権者ガ抵当不動産ニ対スル競売手続ノ開始又ハ滞納処分ニ因ル差押アリタルコトヲ知リタル時ヨリ二週間ヲ経過シタルトキ  
四 債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。 四  債務者又ハ根抵当権設定者ガ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキ  
2 前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。 2 前項第三号ノ競売手続ノ開始若クハ差押又ハ同項第四号ノ破産ノ宣告ノ効力ガ消滅シタルトキハ担保スベキ元本ハ確定セザリシモノト看做ス但元本ガ確定シタルモノトシテ其根抵当権又ハ之ヲ目的トスル権利ヲ取得シタル者アルトキハ此限ニ在ラズ  
(根抵当権の極度額の減額請求)    
第三百九十八条の二十一 元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。 第三百九十八条ノ二十一  元本ノ確定後ニ於テハ根抵当権設定者ハ其根抵当権ノ極度額ヲ現ニ存スル債務ノ額ト爾後二年間ニ生ズベキ利息其他ノ定期金及ビ債務ノ不履行ニ因ル損害賠償ノ額トヲ加ヘタル額ニ減ズベキコトヲ請求スルコトヲ得  
2 第三百九十八条の十六の登記がされている根抵当権の極度額の減額については、前項の規定による請求は、そのうちの一個の不動産についてすれば足りる。 2 第三百九十八条ノ十六ノ登記アル根抵当権ノ極度額ノ減額ニ付テハ前項ノ請求ハ一ノ不動産ニ付キ之ヲ為スヲ以テ足ル  
(根抵当権の消滅請求)    
第三百九十八条の二十二 元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。この場合において、その払渡し又は供託は、弁済の効力を有する。 第三百九十八条ノ二十二  元本ノ確定後ニ於テ現ニ存スル債務ノ額ガ根抵当権ノ極度額ヲ超ユルトキハ他人ノ債務ヲ担保スル為メ其根抵当権ヲ設定シタル者又ハ抵当不動産ニ付キ所有権、地上権、永小作権若クハ第三者ニ対抗スルコトヲ得ベキ賃借権ヲ取得シタル第三者ハ其極度額ニ相当スル金額ヲ払渡シ又ハ之ヲ供託シテ其根抵当権ノ消滅ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ其払渡又ハ供託ハ弁済ノ効力ヲ有ス  
2 第三百九十八条の十六の登記がされている根抵当権は、一個の不動産について前項の消滅請求があったときは、消滅する。 2 第三百九十八条ノ十六ノ登記アル根抵当権ハ一ノ不動産ニ付キ前項ノ請求アリタルトキハ消滅ス  
3 第三百八十条及び第三百八十一条の規定は、第一項の消滅請求について準用する。 3 第三百七十九条及ビ第三百八十条ノ規定ハ第一項ノ請求ニ之ヲ準用ス